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ディスチャージ・デイズ  作者: 奈良崎コロスケ
5/12

不穏な空気

ディスチャージ・デイズ第5話

不穏な空気が立ち込め始めたのはゴールデンウィークが明けたころ。同じクラス(1年10組)の嫌味なメガネ男・隅田隆が「八王子は田舎だなぁ、八王子は 田舎だなぁ♪」と鼻歌まじりに呟き始めたのだ。後ろの席に座っている斉木悟(最寄駅は京王線の長沼)にあてつけているのは明白である。


しばらく黙って聞いていた斉木は、ついに我慢できなくなり、隅田の胸倉をつかむや、キツい一発をお見舞い! 隅田の嫌味メガネはぶっとび、あっという間にグロッキー。斉木はそれ以上手を出さなかったが、隅田は保健室に直行し、問題発覚。斉木は停学となった。


斉木の名前は瞬く間に学校中に広まり「八王子軍団に手を出すとヤバい」という雰囲気が蔓延し始める。俺も斉木と一緒に通学していて仲が良く、手を出した気持ちは理解できたが、都会の学校に来てまでヤンキーごっこなんぞ勘弁と思っていたので、この状況は歓迎できなかった。


八王子軍団の数はせいぜい7、8人。柔道の有段者でリーダー格の斉木がいなければ、くみしやすいと考えた都内のアウトロー組の動きが活発化した。田舎者が高校生活序盤で力をつけるのは目障りだったのだろう。


とはいえ、おおっぴらにやると斉木のように停学を食らう。世田谷・杉並の地元チームは、八王子軍団に個別に脅しをかける作戦に出る。トイレに行くときを見計らって個室に連れ込んで睨みをきかせる。帰り道で待ち伏せ、公園に連行し、マイルドな暴力をふるう…。


しかし、斉木がいなくとも国分寺の暴れ馬・梶川陽二が八王子軍団には残っていた。体格も170cm程度でやせ形、どちらかといえばベビーフェイスで女子に も人気のあった梶川は、ニコニコしながら平気で相手をぶん殴るような、計り知れない怖さを持つ男だった。


うっかり梶川に脅しをかけて、思い切り頭突きを食らって立ち上がれなくなるヤツや、腹に一発食らって噴水のように吐いたヤツもいた。


当然のように俺にも災厄は降りかかったが、オッサンにしか見えない立川のヤンキーたちと比べるとあきらかに迫力不足で、脅しのボキャブラリーも貧しく、ぜんぜん怖くない。手を出すのもバカバカしいので無視を決め込んだ。


果たして世田谷・杉並連合の思惑とは裏腹に八王子軍団は弱体化するどころか、仲間意識が強固になる。そうこうしているうちに斉木が一週間の停学から戻ってきた。

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