こんなはずじゃなかった
ディスチャージ・デイズ第4話
NSは早稲田や慶応の付属を狙う頭のいい連中のスベリ止めとして機能し、一方でオレのような大バカ連中がダメ元で記念受験するようなBの上クラスの学校。
滑り止め校であるため、上位校に合格した連中は入学をスルーする。そのため、けっこうな補欠人員が必要となり、八王子軍団のようなパープリンがサルベージされるのだ。
また、上位の第一志望を運悪く落ちた、ものすごく頭のいいヤツも中にはいたりする。俺はもちろん、補欠合格組。住んでいるところも、オツムの レベルも男女の校舎もバラバラ。本当に特殊な学校だった。
5月にもなるとグループ分けもビッチリできるものだ。やはり通学時に顔を合わせる連中と仲良くなるのが一般的。立川からNSまでは色々な通学コースがあったが、入学当初は南武線で分倍河原まで出て、京王線に乗り換えて桜上水で下車というコースで通っていた。
京王八王子や高幡不動、聖蹟桜ヶ丘あたりに住んでいる連中が乗車している車両に乗り込み、府中や調布近辺の連中も徐々に合流。同じ沿線の高校(校正女子とか桜水商業)に通う女子も毎度おなじみの面々となってきて、だんだん仲良くなっていく。
実際、学校の女の子と遊ぶよりも、沿線の学校に通う彼女たちと遊ぶほうが圧倒的に多かった。日桜は女子のほうが男子よりも偏差値で5つは上であり、森英恵 デザインのセーラー服をオシャレに着こなしたりして、けっこうスカしていたので、俺らの出る幕はほとんどなかったのよ…。
余談だが、当時人気絶頂だった宮沢りえちゃんが受験するとのうわさを聞いたときは学校内が騒然となった。しかし残念ながら落ちてしまった…。
女子と触れ合う機会が皆無ではない。部活は一緒なので野球部のマネージャーなんかは普通に女子だし、強豪のアメフト部とチアリーダーなんてのは濃密な… とってもエロい関係にあった。吹奏楽部なんかはもちろん男女混成である。つまり女子とのやりとりが多そうな部活を選べば、けっこう楽しい学園ライフが送れ た…可能性もあるのだ(あくまで可能性)。
だけんども、ハグレ者ぞろいの八王子軍団の90%は帰宅部。中学時代バレーボール部に所属していた俺も、身長が伸びずに高校レベルで続ける気にはならず、結局は帰宅部入り。
一応、クラブには必ず所属しなければならない、みたいな校則があったので、ほとんど活動している気配のないペン習字クラブに届けを出すも、3年間で一度も顔を出したことはない。
せっかく憧れの東京(23区内のこと)の学校に通い始めたのに、つるむのは府中や八王子の連中。女子はすぐ近くにわらわらといるのに(窓の外を見れば普通に歩いている)、ほとんど接点がないという生殺し状態。俺は文字通りの五月病に冒されかけていた。