よっちゃん
ディスチャージ・デイズ第2話
1984年4月。晴れて高校生になったオレ。近所に住んでいるミカちゃんもNS高校に入ったので、うちのオカンと彼女のお母さんと4人で入学式の帰りにメシを食ったのをよく覚えている。
ミカちゃんは長身かつ結構な美人で、大学卒業後はスチュワーデスになったほどの才色兼備なお方だが、当時は彼女にぜんぜん興味がなく、「魔法使いサリー」に出てくるよっちゃんに似てるから「よっちゃん」とアダ名をつけてからかっていた。ザ・中学男子!
でもってミカちゃんと一緒に学園生活をエンジョイするかといえば、男女別学なのでそんなわけにもいかない。なにせ校舎からして男・女がぱっくり分かれているのだ。半年もするとミキちゃんとは疎遠になり、ほとんど口をきくこともなくなってしまった。
一方、立川3中からNSに入学した男子は俺オンリー。クラス全員見知らぬ野郎ばかり。なにせ立川から通っている男子も同学年でオレ1人だったのだ。世田谷界隈の連中にとってみれば「立川? それ東京?」状態ですよ。
立川のどんよりとした田舎臭い雰囲気とはガラッと変わった別世界。下手すりゃ孤立しちゃうところだが、まぁ当時はデリケートさの欠片もないパープリンだったので、すぐに同類のバカを見つけ出し、つるみ始めることになるわけです。
驚いたのはボンタンをはいているヤンキーがほとんどいないこと。84年といえば『ビー・バップ・ハイスクール』がメガヒットを飛ばしていた時期。世はまさに大ヤンキー時代。立川では優等生タイプですら改造学生服を第一デパートのウイングであつらえるのが普通だった。「さすが都会の学校は違うなぁ」と唸る、奈良崎コロスケ15歳の春である。