いよいよ出番
ディスチャージ・デイズ第10話
頭がはじけてぐるぐると廻るアレコレ。せっかく運よく都会のガッコに入ったのに、ビーバップごっこに巻き込まれて俺は何をやっているの?
新宿や渋谷で可愛い女の子とチャラチャラ遊ぶようなな高校生活を送るはずじゃなかったの?
こんなに大々的にケンカなんかやらかして、停学にでもなったら親になんて言い ワケすりゃいいのよ……。
断っておくが、俺は八王子軍団の面々が嫌いなわけではない。むしろ中学からの男友達がまったくいないアウェイ状態にも関わらず、すぐさま彼らと意気投合できたことは、土地勘のない学校に通う上で勇気づけられたし、約40分という長い通学時間をバカ話しながら潰せるのもありがたかった。
なので八王子軍団を小バカにするような都内連合(正確には23区連合)には少なからずムカついてはいたのだ。しかし、である(冒頭に戻る)。
そんなこんなでテンション激低のまま表舞台に立たされることになった俺。お相手のロクは曙橋のクスリ屋の息子で、体格的にはオレと大して変わらない。165cm、55Kgってところだ。
ゆるくパーマなんかかけてシャレオツ気取りの男だが、いいとも青年隊のアツシ(久保田篤=初代いいとも青年隊の一人。 後にパチンコでマンションを買うことになる男)に似ていて、とてもモテるタイプには見えない。
「ケンカは呑むか呑まれるか」だということをイヤというほど叩き込まれているヤンキー文化圏の住人にとって、どんなにイキがられてもロクから威圧感を受けることは一切ない。もはや半分は勝ったようなものなのだが、ケガをするのもさせるのも嫌だ。
果たして俺はロクの後ろをとることに専心する。わざとらしくファイティングポーズをとってきたロクに対して ローキックを撃つふりをかます。ひるんだところで腰を落とし、足元のジャリをつかんでロクの顔をめがけて下からバシャっと放り投げた。
「ウワッ!汚ねぇぞ!」とかなんと言いながら、 あわてて顔に手をやるロク。 その隙に後ろに回り込んで抱きつき、右腕をひねりあげた。
「イテテテテテテテ、イテーよイテー! 離せ離せ離せ離してお願い!!!」
離すわけがない。
「もうギブする?」と俺が囁くと、ロクは小さく頷いて、あっさり白旗。とっとと終われて安堵した俺を梶川と斉木がガハハと肩を叩きながら迎え入れる。これでタイ。勝負の行方は最後までもつれることが決定した。