少年の詩
『adolescenceの透明』
確かにあるはずなのに 指先は見えない
出口のない鏡の迷路
閉じ込められた光がやがて
抗いながら 消える
思春期の透明
透明が生まれる
砕けた僕の心臓
思考は現実を突き抜けて
もう遠くなってしまった
僕の肉体を探す
仮想の檻の中から
冷めた目が社会を追う
確かにいるはずの僕を通り抜けて
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『針とパズル』
針を呑んだままパズルは砕けた
欠片の痛みと とげしい痛みを
のぞいても のぞいても
丹念に取りのぞいても
針は抜けずにパズルは喪った
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『神官』
神々の夢の随に
私たちは生きる
不可能ごとを目指して
神々はまぶたを閉ざし
ためいきを語る
自由で安定した世界を創りあげる
あきらめ切れぬ その夢
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『孤独になれない』
本当の孤独なんて
知ることはできないんだ
へその緒を切っても
血は続いている
両親をシチューにして
残さずすべて平らげても
両親の両親が
両親の両親のそのまた両親が
この世に生きて存在していた永遠連鎖のなかで
本当の孤独なんて知ることはかなわない
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『花吹雪』
さやさやと風が鳴く日
花がひとひら
読み止しの本にまるで栞のように
そのうちふと
呼ばれたふうな心持ちで目を転ずるも
もはやなにもない




