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一枚の写真
店内の構造、及びドスタ―の護衛等を考えると、エルの中で直接手を下すのはほぼ不可能。ウエイターのフリして口にするモノの毒を混入させる手もあるが、既に声を知られている可能性がある。ゲイルは変装も得意としているが、声帯まで変化は出来ない。確実に、成功条件を満たすには賢くない方法だ。
「どうだ。やはり、エルでの暗殺は無理か」
ゲイルは、ブラウンが手に入れた写真や構造の書かれた紙を仕切りに目配せる。幾つもの写真を一枚ずつ見ては一番後ろへ移す。一枚につき一秒もかからない速さ。なお且つその速さで店の構造と照らし合わせ穴がないか調べる。
ゲイルの手が止まる。見る右手に一枚の写真がある。
「マスター、この写真はエルの入り口か?」
ゲイルはブラウンに写真を見せる。歩道に行き交う人々の影、数段しかない階段に銀色の手すりが備え付けられ、先には店を閉じる大きな左右に開く大扉。他は各種に施されている装飾。この写真だけでも、このクラブの規模の大きさが知れる。
「そうだ」
ブラウンは頷く。