クラブ「エル」
ブラウンは、写真が入っていた逆側の胸ポケットから一枚の小さなメモ用紙を取り出す。そこにはドスタ―のスケジュールが端的に書かれていた。
「まずは、一回目のチャンスは明日の夜だ。ドスターの縄張りである繁華街だ、エルという名のクラブに視察するらしい。時間は定かではないが、パターンから推測すれば0時辺りが妥当なところだろう」
「外出つってもご近所かほんのわずかな距離だな……一応訊くがどう移動するんだ?」
「防弾使用の日本製の高級車だ。撃つのなら乗降時しかない」
「繁華街、0時でも人通りが多いよな」
「ああ……。薬中の奴や娼婦やらが溢れているな。例外では屋敷の前は少ないが、先言った通り警備が居る。どちらにしろ難易度は高い」
「……なるほどな」
人通りの多さ、厳重なる守り、行きで仕留めるにはかなり難しい条件である。
「クラブへの侵入は可能か?」
「いや、その日はドスタ―専用となる。忍び込むのは屋敷同様やや厄介で、まず入る口が見つからない。無理すれば可能だが……これを見てみろ」
ブラウンはナイフやらが入っている戸棚から数枚の写真を取り出す。ゲイルへそれを渡す。腕を組み、写真の概要を話す。
「客席の上だ。ガラス張りの部屋があるだろ、そこにドスターが入る。店員に訊いた話ではこれまた防弾仕様だ。狙える位置も……舞台しか無理だ。客席からでは死角になるからな、ちなみに天井裏も調べてみたが、これもきちんと考慮されていた」
「舞台だけ……か」
ゲイルが呟く。ブラウンは突如笑いだす。
「ゲイルのストリップ姿も様になるだろうから、必要ならば用意するぞ」
「……いらん」
ブラウンの冗談に付き合うことないゲイル。冷めた目で見上げ、次なる情報を求めた。