成功条件を教えてくれ
ブラウンは拭き終わった皿を後ろの棚に入れる。
「今日の仕事もお得意様からだ」
ゲイルは口に付けていたカップを離す。ブラウンに手紙に顔を向けたまま目線だけを送る。
「ゴーストからか」
「ああ」
ゴースト。
グレータウンを仕切る裏組織、その中で規模の大きい勢力の一つ。
ゲイルはゴーストから仕事を貰う事が多い。ただ所詮、雇われにしか過ぎない故にゲイル自身にはそう特別視していない。他の勢力からでも仕事を引き受ける。食いぶちを繋ぐ為に、どんな方法も辞さない男だ。
「相手は誰だ」
ゲイルは訊いた。ブラウンは、着ている窮屈そうなベストの胸ポケットから一枚の写真を取り出す。ゲイルもそれを確認するためカップを一度置く。
「中年太りのおっさんだな。相変わらず腐った見掛けの奴ばかり仕留める……」
「そう言うな。今回、いつもより報酬がアップしている。お前にとっては嬉しい話だろう?」
「ふん、タカが知れてる」
鼻で笑う、嘆くゲイルからは含み笑いが浮かぶ。さき置いたカップを手に取り、僅かな残りを一気に口へ流す。カップを置き、顔を手紙からブラウンへと向ける、手紙は元の場所に不器用に押し込む。
「……成功条件を教えてくれ」
ゲイルは言った。引き受けたと言う代わりに、こう口にする。この言葉は彼の口癖のようなものだ。それを聞いたブラウンは頷く。強張った顔を崩すことなく。