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コーヒー
ゲイルはカウンター奥の椅子に腰を下ろす。コートの裏ポケットに入れていた手紙を取り出し読む。コーヒーが出るまでの暇つぶしだろう。特にブラウンと会話することない。ただコーヒーを煎れる音だけがバーに響く。
「出来たぞ」
「ああ」
ゲイルの目の前に煎れたてのコーヒーが入ったカップが置かれる。ブラウンが手を離し、見たゲイルは一度そのコーヒーを口にする。一口しただけでカップを元の位置に置く。ゲイルはブラウンを見る。ブラウンは黙々と皿を拭くだけだ。
「今日も無しか?」
ゲイルは訊いた。ブラウンの皿を拭く手が止まる。
「ふっ……それが空になってから話そうと思っていたところだ」
含み笑いを浮かべるブラウンは再び皿を拭き始める。ブラウンの応答を聞いた、ゲイルは一つチッと舌打ちをした後カップを持つ。飲みかけのコーヒーをまた口にする。