Mr.ブラウン
灰色と呼ぶに相応しい街。グレーランド。
正しき名も存在するが、街に住む者、誰も知る事がない。薄汚れ、雨を避けるため場所を持たぬ者がいたる所で見かける。小高い建物が並んでいるが栄光は過去の事。窓のガラスは割れ、外壁も崩れかけている。まともに暮らす者であるならば人が住めるような場所ではないと判断するであろう。まるで社会から見放されたような街だ。
そんな街でバーを経営する変り者が居る。
Mr.ブラウン。
彼はグレーランドで一人マスターとしてバーを経営している。当然、儲けはない。こんな場所まで飲みに来る馬鹿はこの街にすらいない上、店の中も客を招く場所とは思えないほど散らかっている。客が掛けるべき椅子のほとんど形がない。座れそうなのはカウンター一番奥に二脚、テーブル席に一脚だけだ。他はもう椅子とは呼べない、残骸と化していた。
ブラウンは見た目は四、五十ほど。鼻下に髭を生やし頭は丸坊主。筋肉づいた体は一目見ただけで迫力があり怯えすら感じてしまう。恐らく彼はその見た目通りの実力の持ち主であろう。そしてだからこそにこの荒れ果てた街で生き抜いているに違いない。