ある冒険者の悲しき真実
子供の頃、町が魔物に襲われた時に、冒険者が助けに来てくれた。
剣や魔法で、次々と魔物を倒していく姿は、強く勇ましく、俺の憧れの職業になった。
俺も大きくなったら、冒険者になって、ダンジョンを攻略したり、いろんな所を旅しながら冒険がしたい。
よし、冒険者になろう。
まずは、強くなるために特訓だ。
毎日、木の棒を振り回してたら、運良く剣士の能力に開花した。近所の同年代の子達の中では、俺は最強だ。目指せ最強剣士!
もっと強くなって、Aランク、いや、Sランク冒険者になってやる!
親に話すと、俺が冒険者になることを応援してくれた。家族の応援は心強い。
♢♢♢
そして、大人になり、念願の冒険者になった。すぐに仲間もでき、パーティーを組んで依頼をこなしていく。
順調に冒険者として、成功していくはずだったのに…。
いやいやいや!待って!聞いてないよ!
「今日はここで休みましょう」って、笑顔で言われても、えっ?何かの間違いでは?
冒険者の旅って、野宿が当たり前なの?
嘘でしょ!聞いてないって!
俺は、綺麗好きなんです。外で寝るとか無理なんです。魔物は大丈夫だけど、虫は苦手なんです。野宿してて、顔に虫が飛んできたら、どうします?
怖いですよね。ムリー!
えー、お風呂も入れないの?無理だよ。
さっき、魔物を倒して返り血浴びちゃったんですけど、どうしよう。
魔物の血に釣られて虫とか来ない?大丈夫?
はぁ、宿屋に泊まるから、温泉入るぞ!って楽しみすぎて、いつもより余計に返り血浴びちゃったよ。
お風呂入れないなら、魔物も何かこう、上手く、ちょいって切って血が出ないようにしたのに、派手にヤっちゃったよ。
俺って、毎日、お風呂に入りたいタイプなんです。汚れや臭いに気をつけてます。
もし、「あの人、なんか臭くない?」とか思われたら、ショックで闇落ちして、世界滅ぼしちゃうよ。
はぁぁ。綺麗にしたい。体洗いたいお風呂に入りたい。
えっ、近くに川があるって?無理です。冷たい水に入って風邪引いたら大変だし。
あぁ、何かストレスでお腹痛くなってきたな。トイレはどこかな?
まさか…。トイ…レは、あり…ますよ…ね…
いやー!野宿だからトイレも自然にって、絶対にダメだって。
お尻を何かにガブッて噛まれたらどうする。
または、虫にお尻を攻撃されるかも。カマキリとかオウサマバッタとか。バッタ界のオウサマだから、不敬になるかもよ。
そもそも、宿屋に泊まるって思ってたのに、それが普通じゃないなんて。
うちの町に来た冒険者達は、みんな宿屋に泊まってたよ。野宿なんてしてなかったし、そんな人いなかったけどな。
誰も、野宿したことありますって顔してなかったよ。宿屋サイコーって顔してたし。
冒険者は、野宿が当たり前ですって、誰も教えてくれなかったよ。教えて欲しかったな。
俺はいったい何のために冒険者になったんだ。
あんなに憧れてたのに、野宿の事を思うと辛くて、耐えられそうもない。
清潔でいられないなんて、冒険者って何て大変な職業なんだ。
やっぱり、冒険者になる人は選ばれた人なんだな。
好きなことや、なりたい職業が、自分に合うとは限らないんだな。
はぁ、野宿さえなければ、俺だって冒険者が続けられるのに。俺の綺麗好きな所さえなければ…。
みんな、すまない。俺は野宿に耐えられそうもない。今から猛ダッシュで町まで行って、宿屋に宿泊するから、また明日合流しよう。
えっ?次の町まで山越えするから大変だって?そんなの野宿に比べれば楽勝だ。
それじゃあ、温泉目指して、いってきまーす




