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リンゴ探し

作者: 蜂鳥タイト


 私の名前は、神無美琴(かんなみこと)

 十七歳の普通の女子高生である。

 これは、私が経験したとある出来事について話していこうと思う。

 面白いかって? 聞かれても困っちゃうな~そこはみんなの判断でお願いね!



 朝日が昇り部屋を明るく照らし出す。

 私はゆっくりと目が覚めた。

 そう、今日はついに冷蔵庫でキンキンに冷やされている、青森県産のリンゴを食べる日なのだ。

 私はウキウキで服を着替え、一階へ降りていく。

 

「おいしいリンゴが~私をまって~いる~さぁ~たべましょ~」


 なぞに浮かんだフレーズを歌いながら冷蔵庫を開けた。

 そこで私は衝撃を受ける。

 なんと()()()()()()()()()()()()()

 確かに昨日までは冷蔵庫にあったはず……


「いやあああ!!」


 声にならない声をあげて私はその場で頭を抱え座り込むのだった。

 しばらく泣き続けた後、皆をリビングに呼び出す。

 そうして私は腕を組みながらリビングに置いてある机の前で、座っている五人の女の子をじっくりと見る。

 もちろんリンゴの在り処……食べた人を聞き出すためだ。


「冷蔵庫に入ってたリンゴ! 食べたのは誰!?」


 私の問いに皆困ったような表情をしている。

 手前から、次女の神無水月(かんなみづき)・三女の神無華怜(かんなかれん)・二列目に四女の神無紅葉(かんなもみじ)と五女の神無久実(かんなくみ)・三列目に六女の神無楓子(かんなふうこ)が座っている。

 六人姉妹だが年齢は私が長女で十七才。

 長女とはいえ、許せない。

 この中にリンゴを食べた犯人がいる。


「そんなことより私のプリンも誰かに食べられたし! マジチョーむかついたんだけど?」

「私も……」

「ストップ! 二人言うとまとまらないでしょ!」


 私は慌てて静止する。

 まさか他にも被害にあってたとは……

 これは一人ずつ解決していくしかない。


「コホン! 怒らないから皆正直に話すように! じゃあまずは水月!」

「私も言うの? 私は特に何も食べてない。むしろゲームする方がいいし」


 うーん……まぁ、水月は確かにこういうのは興味はなさそうかな……

 とはいえ演技という可能性もある……ここは慎重に。


「水月は一旦分かった。じゃあ次プリンを食べられた華怜。腹いせに私のリンゴ食べてない?」

「は? 何言ってんの? 姉貴のリンゴら食べるわけないだろ! それよりあたしのプリンだよ!」

「あ、プリンだったら私が消費期限切れてあったから捨てた。ちなみに私が冷蔵庫見たときにはもうリンゴはなかったよ」


 紅葉が思いついたかのように話す。

 そういえば、私が見たときも消費期限切れていたような……

 たまたま華怜がプリンを入れていたのを見たので分かる。

 てっきり自分で食べたのかと思っていたけど。


「まじ? うわーやっちゃったわーまた買ってこないといけないじゃん! もう!」


 一応これで華怜と紅葉が犯人説も無くなった。

 後は三人。


「さて久実ちゃんと楓子ちゃんはどう? 久実ちゃんはさっき何か言おうとしてたよね?」

「はい! 私実は三角形の小さなショートケーキを冷蔵庫に入れてまして……」


 その瞬間、紅葉の表情が変わった気がする。

 あ~なるほど……紅葉ちゃんは分かりやすいなぁ……

 ケーキは紅葉が食べたのね……


「そのケーキに、どこから入ったのかわかりませんが……白い虫が入ってたので捨てようとしたら、きれいさっぱり無くなっていたのです! 死んでいたとは思うのですが……」

「え?」

「うぐ!?」


 紅葉の表情がどんどん悪くなっていく。

 そしてそのまま椅子を蹴るように立ち、リビングを飛び出していった。

 おそらくトイレだろう……これはドンマイ……後で新しいケーキ買ってあげよう……

 ということは最後……

 とはいえまだ楓子ちゃんはまだ幼い……

 一応聞くだけ聞いて見ようかな……

 間違えて食べた可能性もある。


「楓子ちゃん私のリンゴ食べた~?」

「ううん! リンゴきょうとどくって、きのう……みことおねえちゃんがいってた! わたしたのしみ!」

「え?」


 あれ? そうだっけ……

 全然覚えてない。

 でもあの時、確かに冷蔵庫にはリンゴがあった!

 みんなの視線が一気に私の方へ向いている気がする。

 その時インターホンが鳴り響く。

 

「はーい!」


 私は逃げるように、リビングを飛び出しおもむろに扉を開ける。

 するとそこにはおばあちゃんの姿があった。


「おばあちゃん!」

「おや、出迎えなんてどうもねぇ、はいこれ、リンゴ皆でひとつずつ食べなさい」


 私はひとまず食堂に戻り、鞄を開ける。

 そこには【青森県産】リンゴと書かれていた。

 その時、急に映像が頭の中に降りてくる。


 前日の夜。


「明日はリンゴだー! いい夢見ますように!」


 と私は布団のそばにリンゴの本を置いている映像が浮かんだ。


 ということはつまり……

 

 鞄に入っているリンゴをみんながのぞいた後、再び私を見る。

 いや……えっと。

 何も言い訳出来ない。


「えっと……実は夢落ちでしたー! ドッキリ……」

「「「美琴おねえちゃんはリンゴ抜き(っしょ)!!」」」


 その後全員から叫ばれてしまい、私はそのまま部屋で食べ終わるまで待機という事になり現在部屋で三角座りしている。

 今頃、みんなで美味しくリンゴ食べているのだろうなぁ……


「リンゴ……食べたかったなぁ……」

「みことおねえちゃん!」


 しばらく待機していると、楓子が突然部屋に入ってくる。

 なんだろう? もう食べ終わったのかな? リンゴ()くのにも時間かかるだろうに……

 というかいきなり……


「扉はノックして……」

「みんなといっしょにいっこづつリンゴたべよ!」


 私は顔をあげる。

 思わず連れ出され再び食堂に向かうと、そこには笑いながら私の方を見ている姉妹たち……

 机の上にはリンゴがまだまだたくさん乗っている。


「テッテレー! 実は全部知ってて敢えて乗ってあげたドッキリ大成功―! ほら! まだみんな食べてないから早く食べよ!」

 

 紅葉は笑いながら私を椅子に座るように、手招きをしていた。

 私は思わず涙がこぼれ、そのまま一人づつ抱きしめる。

 皆顔を赤らめていたが拒否はされなかった。


 「「「いただきます!」」」


 みんなで楽しくその時食べたリンゴは、人生で一番おいしいと感じたリンゴだった。

 

 おしまい。

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