第9話 巫女Vtuber爆誕! カメラマンは俺だった件
「イエイ! 超絶美少女で神環の巫女候補Vtuberルーナ・フェリシアちゃん、爆誕!」
「長い!」
「……ルーナちゃん爆誕!」
「短い! それにお前は今生まれたわけじゃないだろ」
「細かいなー、もう」
プクウと頬を膨らませるルーナ。
「てかさ。なんでそのままなんだ?」
「なにが?」
「ガワだよ。普通は実物と違う感じにするだろ?」
「え? そうなの? ……知らんかった。みんな変化の術を使ってるんだと思ってた」
そんなわけないだろ、と突っ込みたいが、実際ルーナは自分で変身した。
それならみんな変身していると思っても仕方がないか。
「もっと可愛い感じにしたらどうだ? トドの被り物した感じとか」
「えー! 私、可愛いじゃん!」
「あー。そうだけど、自分で言ったからマイナス30点だな」
「ガーン……」
俺はせっせとキュン子の動画を開く。
性格は真逆だが、せめてガワだけでもキュン子になればオレの心の安定度が格段に上がる。
「これ! こんな感じでどうよ?」
「ムリ―! 私は私以外のガワになれないよ」
「……それって、Vtuberって言えるのか?」
「え? 言えない? でも、こんな感じでしょ?」
まあ、確かに画面越しでみれば、Vtuberにしか見えないだろうな。
けど、現実と同じガワって。
Vtuberになる意味あんのか?
「まあ、1000歩譲って、ガワはそれでいいとして、カメラはどうする? スマホか?」
「それも大丈夫。私に任せて」
嫌な予感しかしない。
今回は拒否ろうとした瞬間。
「えい!」
いきなりルーナに目付きをされた。
「ぎゃああーーー!」
やっぱり!
こいつに任せると絶対にいいことがない。
はっきりわかんだね。
「なにしやがる!」
「見て見て! ほら!」
目の奥がキーンと痺れる。
視界が真っ白だ。
「お前のせいで見えないんだが?」
数秒後、何とか視力が復活する。
するとルーナがモニターを指差す。
『巫女ちゃんねる』のライブ配信が開始されていた。
そして、その画面にはモニターが映っていて、さらにその中にはモニターが映っている。
重ね鏡みたいな、あれだ。
……ということは。
「神気で、あんたの目とリンクさせたの。あんたが見たものがそのままライブ配信されるってわけ」
「じゃあ、俺がカメラマンってことか?」
「そういうこと」
まあ、これだと俺の顔が映ることはないから身バレの心配はない。
そう考えればいいっちゃいいか。