第8話 巫女と朝チュンと、俺が床で寝てる理不尽について
チュンチュンとスズメの鳴く声で目が覚める。
昨日のは壮大な夢だった。
……なんてオチはなかった。
床に寝てた時点でわかったんだけどね。
いつも俺が寝ているベッドには異世界から来たとかいう巫女のルーナが寝ている。
なぜ、家主の俺が床で寝なけちゃならんのだ。
まあ、ベッド争奪戦の格ゲー勝負で完膚なきまでに叩きのめされた俺が悪いんですけどね。
てか、なんであいつ、あんなに格ゲー強ぇーんだよ。
おかげでベッドを譲るだけじゃなく、土下座までする羽目になたじゃねーか。
なんて考えていると、いきなりパッとルーナが目を開ける。
そして――。
「にくーーーーー!」
お前、少年漫画の主人公みたいなやつだな。
***
ルーナの策略によって同居と『巫女ちゃんねる』の登録者数100万を目指すことになった。
決まったなら、さっさと達成して元の世界に帰ってもらうために全力を注ごう。
なので、朝飯を食べた後、さっそく企画会議に入る。
ちなみに大学は、田中に連絡してB定食を奢る代わりに代返をお願いした。
なかなかの痛い出費だ。
「……で、どうすんの?」
「お前……まさか、ノープランなのか?」
「それを考えるのがマネージャーの仕事でしょ?」
「マネージャーでもねーし、仕事でもねぇ!」
『巫女ちゃんねる』の現在の登録者数は『1』。
もちろん、俺が登録した分だ。
「これの100万倍か……」
「やっぱり、難しいかなぁ? 帰れないのはさすがにマズイよ。神環の巫女にならなくちゃならないのに」
ルーナが不安そうな表情をする。
俺はルーナに早く帰って欲しいが、ルーナも早く帰りたいんだろう。
しかも、異世界にいるんだから、その不安は俺なんかじゃ計り知れない。
ここはいっちょ、とっておきの情報で元気づけてやるか。
「ふふん。まあ、そんなに心配するな。俺がプロデュースすれば簡単だ」
「ホント!?」
「推しのチャンネルを登録者数100人にした男だ、俺は」
「えーーー! す、すごい……。巫女ちゃんねるの100倍じゃん!」
ルーナが尊敬の眼差しで俺を見ている。
いいぞ。もっと敬え。
「まずはコンセプト決定からだな。なにかやりたいものはあるか?」
「Vtuber!」
「却下!」
「なんでっ!?」
「ガワを用意できん。金もツテもないからな」
「それなら心配ないでござる」
……ござる?
「忍法! 変化の術!」
ルーナが立ち上がって、両手で印を結ぶ。
だから巫女なのか忍者なのかハッキリしろよ。
ルーナが光り始めたと思ったら、その光が収束していく。
そして、俺の目の前には『3Dモデルのルーナ』がいた。
うわー。すげえ。
こんなの、この世界じゃ絶対にできない。
オーバーテクノロジーというか魔法に近い感じだ。
さすが忍法といったところか。
いや、本当に凄い。
すげーけども。
現実世界で見ると――なんか不気味だな。