第7話 巫女と神罰(物理)と同居契約
「えっと、登録者数イコール神気とかだというのはわかった」
「うんうん」
「けど、それを貯めたからって帰れるっていう根拠はなんだ?」
「さっき、チャンネル登録してくれたでしょ?」
ルーナが『巫女ちゃんねる』の登録者数のところを指差す。
確かにさっき俺が登録したから『1』になっている。
「でね、登録してもらったときにすこーし、力が戻った感じがしたの」
「少しってどのくらいだ?」
「100万分の1」
「……」
よくそんなの感じ取れるな。
100万分の1って誤差じゃねえかよ。
「ということで、『巫女ちゃんねる』を登録者数100万人にしようと思うんだ」
「……そうか。頑張れ」
「頑張るぞー!」
右拳を振り上げ、気合を入れているルーナ。
そして「了承を得たってことで」と言い、親指をグッと立ててどや顔をする。
「んじゃ、そういうことでよろしく! 心配しないで。私、好き嫌いないから」
……ん?
「あっ、お肉は必須だから! 絶対に! 破ったら私からの神罰(物理)ね♡」
「喧嘩売っとんのか!」
「よかったねー。こんな美少女と一緒に住めるんだよ? 普通はお金払うくらいだよね」
「帰れ! すぐに!」
「だーかーら! 帰れないって言ってんじゃん」
「待て待て待て! なんで、同居することになってんの? おかしいだろ、そんなの!」
「そう? 行くところがないんだから、ここに住むのは当たり前じゃない?」
「全然、当たり前じゃない!」
ルーナは不思議そうに首を傾げる。
こいつ、天然過ぎる。
「大体、男と女が一つの部屋で寝るのはマズいだろ?」
ふっ! こういえばさすがに我に返るだろう。
「ふふん。甘いね。そう言えば私がビビるとでも思ってるの? けど、残念でした! 私には作戦があるんだもんね」
「ほう? 作戦とな? どんなのだ?」
「あんたが外で寝ればいい」
「舐めとんのか!」
なんで家主の俺が野宿せにゃならんのだ。
「もういい。今、警察呼んでやるから、かつ丼食わせてもらってから、コンクリートの部屋で寝かせてもらえ」
「おやおや? いいのぉ? 本当にいいのぉ? 警察なんて呼んじゃって」
「な、なにがだ?」
急にルーナが涙目になって両手で自分の体を抱きしめる。
そして小さく、震えた声でこう言った。
「この男、迷惑防止条例違反者です……」
「なぜ、異世界の人間のお前が、そんな言葉を知っている……?」
ルーナがいつものどや顔に戻り、ポンと俺の肩に手を置く。
「かつ丼食わせてもらってから、コンクリートの部屋で寝かせてもらいなよ」
「ち、ちくしょーーーー!」
こうして、俺はルーナと同居することになり、さらにチャンネル登録者数100万を目指すことになったのだった。