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第5話 巫女と怨霊と、俺のツッコミが足りない夜

「アアアアーーーッ!」


 お菊ちゃんが皿を振り上げて、目を血走らせながらこっちに向かって来る。


 呪いじゃなく、物理で殺りにきた。

 非常にヤバい。


「な、なんとかしてくれ!」

「任せて!」


 ルーナは両手で印を結ぶ。


「忍法、変わり身の術!」


 そう言いながら、お菊ちゃんの方へ俺の背中を全力で突き飛ばしてきた。


「ちょ、おまっ! それ、変わり身じゃなくて囮!」


 てか、巫女じゃなかったのかよ!?


「皿の仇!」


 お菊ちゃんが皿で殴りつけてくる。


 あ……死んだな、俺。


 だが、皿は俺ではなく壁に当たって砕け散った。


「ア、アア……。きゅ、9枚足りない!」

「俺のせいじゃねーだろ!」


 憎しみがこもった恐ろしい表情で睨んでくる。


「皿ってないの?」


 ルーナが部屋の隅の安全圏から叫ぶ。


「あ、あるにはあるけど……」

「渡して! 早く!」


 お菊ちゃんの追撃を躱し、引き出しから皿の束を出す。


「これだぞ? ダメだろ!」

「気持ちが大事だから!」


 ホントかよ?

 だが賭けるしかない。

 南無三。


「はい、お皿!」

「ア? ああ……」


 お菊ちゃんの動きがピタリと止まる。

 そしてポロポロと涙をこぼしながら、皿を胸に抱きしめた。


「いまだ! やー!」


 ルーナが部屋の端っこでなんか手を広げている。


 なにやってんだ、あいつ?


「これで……殿に怒られなくて済む……」


 お菊ちゃんがスーッと、霞のように消えていった。


 たぶん怒られると思うぞ。

 ……だって、それ、紙皿だもの。


「イエーイ! 邪気払い初成功!」

「イエーイ! やったな!」


 ルーナとハイタッチする。


 ……ん? 今ので初成功?


「これで全部解決だね!」

「……ああ」


 まだお前が残ってた。


「見事、邪気が祓われたわけだけども! 私のおかげで! わ、た、しの!」

「そうだな。……そうか?」


 なんかドッと疲れた。

 もう、どうでもよくなってきた。


「じゃあ、感謝の印に、ポチッといっちゃって」

「なにを?」

「チャンネル登録」


 ルーナがクイクイとチャンネル登録ボタンを指差す。


 それで気が済むなら安いものだ。

 巫女ちゃんねるのチャンネルを登録した。


「にしし! 毎度あり! ほな!」


 ルーナがモニターに頭を突っ込もうとした瞬間。

 

 ガン!


 モニターが倒れた。


「……ルートが閉じてる」

「そんなこと言ってたな」

「ちょっと待って。マジで? そんなわけ……。え? 帰れないの? そんな……」


 何をいまさらショックを受けているのかわからないが、ブツブツと独り言をつぶやき始める。

 徐々に目のハイライトが消えて、虚ろになっていく。

 そして――。


「……ハッピーハッピーハッッピーー! ハピハピハピー!」


 どうやら精神だけ先にお帰りになれたみたいだ。

 心配するな。体は着払いで送ってやる。


「そっか、帰れないんだ」


 ルーナが一瞬、寂しそうな顔をする。

 が、すぐに笑顔になった。


「ま、いっか。こっちの世界に興味あったし」

「それはなにより」

「……」

「……」

「てめーのせいだ! 責任取れ、コラーー!」


 いきなり襲い掛かってきた。


「どこがだーー!?」


 ……今日は襲われてばっかだな。

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