表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/30

第29話 巫女と孤独な少女と、かくれんぼの終わりに

「……なにやってんだ、お前?」


 小声で話しかけると、ギギギと目線だけ向けてくるルーナ。


「やべっ。バレた」

「随分と器用なことやれるんだな」


 体の縦半分の服と皮膚だけを透明にしていた。

 神気を使った術か何かだろう。


「器用つーか、これが限界」

「限界まで頑張って透明にできるのが服と皮膚だけなのか?」

「そゆこと」

「全然、役に立たねーな」

「……今までマネーたち、気付いてなかったじゃん」

「まあ、そりゃそうなんだが」

 

 実は理科室に来た時に速攻で目についてたんだよな。

 変な人体模型だなって。

 あの違和感は服を着ていたからか。

 人体模型が服着てるって意味わかんねーもんな。


 てか、内臓を生で見ると結構グロイな。

 トラウマになりかねん。

 とはいえ、早く花ちゃんに見つけてもらうか。


「隠れてるんじゃなくて、何かに化けてるかもな」


 大声で独り言を言う。

 

 ちょっとわざとらしかったか?


「……あっ! 人体模型!」


 俺の言葉で気付いた花ちゃんはルーナのところへ走っていく。

 マジマジと半分だけ透明になったルーナを見ている。


「うーん。なんか胃が荒れてる。脂っこいものばっかり食べてるのかな? この人体模型」

「え?」


 花ちゃんはルーナだと気付いておらず、ダメ出しを始めた。


「腸も疲れてるみたい。生活リズムが乱れてるのかな? あんまり運動もしてなさそうだし、部屋に引きこもり?」

「うぐっ!」


 指摘されるごとに、悲痛な声をあげるルーナ。


 花ちゃん、実は気付いてて、わざとやってない?


「でも、肝臓はすっごい綺麗。ピンク色だね」

「いやああーーー! 恥ずかしい!」


 ルーナは自分の体を抱きかかえるようにして、しゃがみこんでしまう。


「……恥ずかしいか? 内臓見られるの」

「内臓だって女の子の一部だもん!」

「動いた! ……って、お姉さんだ! みーつけたっ!」


 花ちゃんがビッとルーナを指さした。



 ***

 


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、稲荷ちゃん。ありがとう」

「遊んでくれてありがとうございました!」


 花ちゃんと稲荷様が手を繋いでキャッキャしている。


 姉妹みたいでなんだかホッコリするな。

 一人は幽霊で、もう一人は神様だけど。


 花ちゃんがにこりと笑う。


「私ね。かくれんぼを最後までやれたの初めてだったんだ」

「……そっか」


 花ちゃんはかくれんぼだと思っていたようだが、それは違う。

 子供たちは肝試しをしていて、花ちゃんを見て驚いて隠れただけ。

 

 花ちゃんが一方的に、一緒に遊んでたと思っていただけだ。


 それでも花ちゃんはずっとトイレで待っていた。

 一人で孤独に。


 しかも廃校になった学校だと、さらに来る子供なんていなくなる。

 ここにいる限り、花ちゃんはずっと一人のままだ。


「あっちにいったら、人魂のお姉さんとかメリーちゃんといっぱい遊んであげて」

「うん!」


 花ちゃんがグッと親指を立てる。


「ルーナ、よろしく」

「ほいほい! じゃあ、いっくよ!」


 ルーナが花ちゃんに向けて手をかざす。

 同時に花ちゃんの体が光り始めた。


「逝ってらっしゃい!」


 しまった。ダサい決め台詞のままだ。

 ……まあ、いいや。


 花ちゃんの体が徐々に薄くなっていく。


「あのねあのね! すっごく楽しかった! ありがとう!」


 満面の笑み。

 こうして花ちゃんは成仏した。


 『8888』『マジ感動』『神回』

 コメントが流れる。


 そして登録数が10増えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ