第27話 巫女と子供の霊と、誰もいなくなった教室
「かくれんぼがしたい!」
子供らしい無邪気な笑顔を浮かべている花ちゃん。
「知ってるー! ぬいぐるみを包丁で刺すやつでしょ?」
「……それはひとりかくれんぼだ」
花ちゃんがいるのに、さらに幽霊を呼ぶ気か?
花ちゃんが鬼に決まり、俺たち3人は学校内に隠れることにする。
さすがに学校全体だと広すぎるので3階だけに絞ることにした。
「いやー、意外と健全な遊びの指定だったね」
ルーナが楽しそうに言いながら、隠れる場所を探している。
「デスゲームとかを期待してたんだけど」
「期待すんなっ!」
「その場合、最初の犠牲者はマネーだよね」
「なんでだよ?」
「私が殺すから」
「……」
お前、敵だったのかよ。
「私、ここに隠れます!」
稲荷様が教室のカーテンの裏に入った。
うーん。実に可愛らしい。
あんよと尻尾が見えてますよ?
「鬼が花ちゃんでセーフだったね」
「なぜだ?」
「だって、幽霊で透明になれたら終わりじゃん……って、そうだ!」
ルーナが理科室の方へ走っていった。
やれやれ。これじゃ2人とも速攻で見つかるな。
ここは俺が気合入れて隠れて、花ちゃんを楽しませてやるか。
***
息をひそめていると、ガラガラと教室のドアが開く。
ヒタヒタという歩く音。
さすが幽霊なだけある。足音が怖ぇ。
……って、あれ?
花ちゃん、靴履いてたよな?
足音が近くで止まった。
心拍音がMAXになる。
大丈夫だ。見つかるわけねえ。
ロッカーのドアがギギギと開く。
そして子供とは思えないほどの低い声。
「み~つけたぁ」
そこで俺の意識は途切れた。
***
目を覚ますと、稲荷様が発見されていた。
くそ。最初に見つかったのは納得いかん。
「やっぱりかくれんぼは最高だよね!」
花ちゃんが笑顔を浮かべながら、稲荷様と一緒に教室内を探している。
そこまで楽しめるなんて、逆に凄いな。
「よくやってたのか?」
「一週間に一回は、学校に忍び込んでくる子がいたからね」
「へー」
「泣きながら隠れてた子もいたよ」
……それは遊びじゃなくて、ガチで逃げてたんだと思うぞ。
怖かっただろうな。可哀そうに。
「でも、最近は誰も遊びに来てくれなくてさ……」
寂しそうな顔をする花ちゃん。
うん。そりゃね。
だって、ここ廃校しちゃってるもん。
「だからね。お兄さんたちが来たときは、実はちょっと嬉しかったんだ」
ぺろっと舌を出して笑う花ちゃん。
こう見ると普通の子供なんだけどな。
「やっぱりさ、一人は寂しいから」
基本、幽霊同士で集まることはない。
もしかして、幽霊が人間を襲うのは寂しいからだったりするんだろうか?
「花ちゃん。成仏してみないか?」
「え?」
「友達100人欲しいっていうお姉さんがいる。向こうに行けば会えるはずだ」
「ホント?」
「お姉さんもこっちでは、ずっと一人で寂しがってたんだ」
「私と同じだ……」
「だからさ、そのお姉さんと友達になってあげてくれないかな?」
「……う、うん。わかった。それなら友達になってあげる」
よし!
これでお姉さんにも友達が増えるし、花ちゃんも孤独じゃなくなる。
一石二鳥だ。
「あとは、あのお姉ちゃんを見つけるだけだね」
必死にルーナを探す。
が、まったく見つからない。
そして1時間後、変化が訪れる。
「……また見つけられないの?」
花ちゃんの顔が別人のように歪んでいくのだった。