表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/30

第26話 巫女と幽霊と、ドアを開けて出てきたのが想定外すぎた件

 ノックが返ってきた。

 そのことで、全身の毛が総毛立つ。


 マジで出た。

 ……いや、出てくれないと困るんだけどね。

 けど、心情的には出られたら焦る。


 『紫ばあちゃんキター!』『いや、仕込みかも』『ルーナちゃん逃げて』

 コメントも大賑わいだ。


「お腹、壊しちゃったんでしょうか?」


 稲荷様が心配そうにしている。

 

 そして、ルーナはドンドンとテンションが上がってきていた。


「コンコンコーン! 入ってますかぁ!」


 何度も何度もノックを連打している。

 そのたびにノックが返って来ている。


 マジやめてくれって。

 これ、絶対怒るやつじゃん。


「ル、ルーナ! ちゃんとアレ、言うの覚えてるよな?」

「え? ……ああ、アレね。おけおけ。大丈夫!」


 ルーナがお祓いするには、幽霊を弱らせなくてはならない。

 前回は無策だったが、今回は対策バッチリだ。


 ちゃんと紫おばあちゃんに効く呪文を調べてある。


「……ムラサキイモを3回だよね?」

「ちげーよ! イモはいらねーって……」


 その瞬間だった。


 いきなり、バンと勢いよく、トイレのドアが開いた。


「入ってるって言ってるでしょ―が!」 


 いや、言ってないよ。

 ……じゃなくって!


「あれ?」


 ルーナが首を傾げている。

 

 それはそうだろう。

 トイレから現れたのは、白いシャツに赤いスカート。

 おかっぱ頭で、小学6年生くらいの女の子。


 つまり、トイレから出てきたのは紫おばあちゃんじゃなくて――トイレの花ちゃんだった。


 ギロリと花ちゃんがルーナを睨む。


「ひいいっ! イモイモイモ!」


 必死に呪文を唱えるルーナ。

 

 だからムラサキを3回だって。

 あと、紫おばあちゃんじゃないから、その呪文は効かないぞ。


 花ちゃんは睨みながら、ルーナに詰め寄る。


「なんなの!? こんな真夜中にさぁ! 人がトイレに入ってるの、そんなに楽しいわけ!?」

「あ、あうう……」


 小学生に激詰めされる、異世界巫女。

 

「ノック返してるのに、何回もするってマナー違反でしょ!? 大人なのにさぁ!」

「ご、ごめんなさい……」


 涙目でペコリと頭を下げるルーナ。

 

 怒られてもしゃーないね。

 反省しなさい。


「あと、そこのお兄さん!」


 ビッと俺の方に人差し指を向ける。


「あ、はい。なんでしょうか?」

「その目!」

「え?」

「目で動画を撮ってるんでしょ? 目から力が出てるからわかるよ」


 すげえ。そこまでわかるんだ?


「あのさぁ! 許可取ってないでしょ!? 私の!」

「へ?」

「勝手に撮られたら、どう思う? 自分だったら平気!?」

「いや、その……嫌な気持ちになります」


 『子供に説教される大人2人』『正座して聞け』『土下座だ』『普通に金だろ』

 さらにコメントが賑わっていく。


「あと、見てる人も! そうやって面白がるから、撮る人が出てくるんだよ!?」


 視聴者にも説教を始める花ちゃん。


 『誠にごめんなさい』『怒らないで』『誠心誠意謝罪します』

 今度はコメントが謝罪文で埋め尽くされる。


「ったく! いい加減にしてよね!」


 トイレに戻って勢いよくドアを閉めてしまう。


 そして静寂。


「……謝った方がいいよね?」

「だな」


 ルーナが今度は優しくノックする。


「ごめんね」


 だが返事はない。


「あのさ、なんかお詫びするよ。……マネーが」


 お前もしろよ。


「……じゃあさ、一緒に遊んで」


 そう返事が返ってきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ