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第24話 巫女と登録者数と、遠すぎる100万の壁

「マーさん。もう9時です。大学遅刻しますよ」


 ユサユサと揺すられて目を開けると稲荷様がいた。


「……おはよう」

「朝ごはんです」


 ギュッと口の中に昨日のいなり寿司を詰め込まれる。


 助かるよ。その気持ちは嬉しい。

 けどね、起きた瞬間にいなり寿司をねじ込まれるのはキツイ。


 稲荷様は満足げにキッチンの方へ歩いていき、洗い物を始める。


「そんなに働かなくていいんだぞ」

「お世話になっていますので」


 うーん。健気。

 ルーナはというと、モニターにかじりついていた。


「ルーナも見習ってほしいな」

「ルーナさんも頑張ってますよー」


 稲荷様。

 そんなにルーナに気を使わんでもいいんだぞ。


 なんて思っていたら、ルーナはどこか浮かない顔をしている。


「……なんかあったのか?」

「うん。これ」


 ややテンション低めな声で、『巫女ちゃんねる』のページの登録者数を指差す。


「んん? お! 130になってるじゃん。すげー!」

「……」

「なんだよ、嬉しくないのか? 30も増えたんだぞ?」

「んー。例えばさ、1年で300くらい配信するとするでしょ?」

「多い気がするけど、それくらいやらないとだよな」

「で、1回につき、30人ずつ増えたとしても1年で9万人でしょ?」

「そうなるな」

「そしたらさ、100万人になるのは10年後になっちゃうよ?」


 うっ!

 改めて数字で突き付けられると、絶望的だな。


「さすがに10年ニートしてたら飽きるし」


 真剣な目のルーナ。


「……働けばいいだけでは?」


 なんで、ニートなのが前提なんだよ。


「使命もあるし……」


 確かに10年もプライベート皆無の、この部屋でルーナを養うのは勘弁だ。

 もう刑務所の方が気楽なんじゃないだろうか。


 すぐに手を打たないとな。

 

 よし、いっちょ気合入れるか。



 ***



 外からスズメの鳴く声が聞こえる。


「うおっと」


 企画を練っていて、寝落ちしてた。

 だが、次の配信の企画が完成したぞ。

 あの場所であの都市伝説を使うなら絶対いける。


 驚け、ルーナ……って、あれ?


 ベッドには稲荷様だけが寝ている。


 ……どこ行ったんだ?


 外に出てみるとアパートの前にある共有広場でルーナが座禅を組んで目を瞑っていた。

 気のせいか、ルーナの周りに風が渦巻いているように見える。


 いつもと雰囲気が違うな。

 なんていうか……凛とした清楚なイメージ。

 普段のあいつとは真逆だ。


「ふっ!」


 ルーナが目を開くと同時に、電球のようなガラスが弾けるような音。


 そして、ルーナがこっちに気付く。


「あ、マネー。おはよう」

「……今の、なんだ?」

「神気を高めて集中する修行」

「お前が修行するなんて、明日、肉でも降るんじゃないか?」

「なにそれ、最高!」


 目を輝かせるルーナ。


「にしても、今更修行なんてどうしたんだ?」

「ぶぶー! 毎朝、やってましたー!」


 ……そう言えば、稲荷様がルーナも頑張ってるって言ってたな。


「神環の巫女候補だからね」

「そういえば、それってなんだ?」

「世界の循環を保つ存在。神の声を聞いて、運命を整える役目なのだー!」

「全然わからん」

「簡単に言うと、世界の平和はルーナちゃんの肩にかかってるってこと!」

「へー……」

「それでね、邪気を神気で福運に変えて循環させて……」

「そこまでにしとけ。中二病こじらせすぎだ」

「……体に教えた方が早いかな?」

「面白れぇ、きなっ!」


この後滅茶苦茶ボコボコにされた。

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