第14話 巫女と正体バレと、友情の隠し味
助かった……のか?
気が抜けて、その場にへたり込む。
「イェイ! ルーナちゃん、邪気払い、大・成・功!」
アイドルの決めポーズでキメ顔してる。なんだそのテンション。
そうか。
お菊ちゃんのとき、部屋の隅で妙なことやってたのは――邪気払いだったのか。
「てか、なんで最初からやらんかったんだよ」
「邪気はね、ある程度、心が澄んでないと払えないんだよね〜」
「心が澄む……って、気が済む的なやつ?」
「そう。お菊ちゃんのときは、お皿をあげたでしょ?」
「紙皿だけどな」
「それでも怒られないって思って、ホッとしたんだよ。そういうとき、心が澄むの」
なるほど、理屈はわかった。
「じゃあ、今のメリーちゃんも『友達作らなきゃ』って気持ちが変わったからか?」
「そゆこと。だから私の邪気払いは……ウルトラ〇ンのスペ〇ウム光線、的な感じだね」
わかりやすい……。
てか、特撮も観てたのか、意外と守備範囲広いな。
「――いや、ちょっと待て!」
「ん? なに?」
「なぜ、それを先に言わん!?」
「えっ、聞かれなかったから……?」
「お前は使えない新人社員か!」
まったく……。
お前のせいで、こっちは死にかけたんだぞ。
「おーい! 大丈夫かーっ!?」
田中が駆け寄ってくる。
「あれ? 配信は?」
「終わらせてきたに決まってるだろ! 心配したんだぞ!」
「……すまん」
その言葉を聞いた瞬間、ルーナがふらりと揺れる。
「配信、終わった? じゃあ……戻るね……」
あっ、待った! 田中に見られる!
そう呟いた瞬間、ルーナがふっと光って、3Dモデルから元の姿に戻った。
そして限界だったのか、そのまま座り込んで眠ってしまう。
呆然と立ち尽くす田中。
「いや、これは……その……」
だが田中はニヤリと笑った。
「いいさ。訳アリなんだろ? 見なかったことにしておく」
***
寝ているルーナを背負い、田中と並んで歩く。
彼女の正体は、少し迷った末、黙っておくことにした。
言えば田中はきっと「手伝う」と言い出すだろう。
でも、これ以上巻き込むわけにはいかない。
コラボしてくれただけで、十分すぎるほどだ。
「そういえば田中、お前は来ちゃダメだろ。心霊スポットに」
「あんたが言うなっての」
頬をつねられる。
いつもより強めだ。
結構、怒ってるのかな?
田中は霊感が強くて、昔は幽霊に悩まされていた。
けれどあるとき、田中はそれを逆手に取った。
心霊スポットに行けば高確率で怪異が起こる――それを配信に使い始めたのだ。
だけどある日、霊に襲われた。
「あのときは、あんたが助けてくれなかったら、死んでたかもな」
「大げさだ。それに助けたというより一緒に逃げただけだけだ」
「でも心強かった。同じくらいの霊感を持つ奴って、いなかったから」
それ以来、大学でもつるむようになった。
「感謝してんだぞ。何かと気にかけてくれてさ」
「アホか。友達なら当たり前だろ」
「……友達、ね」
田中が後ろのルーナをちらりと見る。
「ルーナちゃんも、心霊関係で何かあったんだろ?」
「……まあ、そんなとこ」
「妬けるよなー」
「焼ける? 肉でも食いたいのか?」
「バーカ。相変わらず鈍いな、お前は」
田中が前に回り込み、指を突きつける。
「事情は聞かねえ。でも困ったことがあったら、相談しろ」
「いや……お前を巻き込むわけには――」
「気にすんな。友達なら、当たり前だろ?」
……まったく、お前もお人よしだよ。