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第九話「屋台のチョコバナナって、ジャンケンがあるから買いづらいよね」

 俺は今日探索した町のことを思い返す。

 建物の中はイカサマがバレた時に、逃げ出すのが難しそうだったなぁ。

 なんかもうイカサマ前提なのが悲しいけど。


 となると、屋台の簡易的なギャンブルの方が儲けは少ないが、イカサマしやすいし逃げやすいだろう。


「それでは、屋台にあったギャンブルを全て紙に書いて、くじで決めるというのはいかがでしょう」

「それもギャンブルっぽくていいかもな。運を天に任せる感じで」


 2人で手分けして紙に書いていく。

 カイも真似をして紙に書い……食い千切って遊んでるな。

 ジャーキーを食い終わって暇らしい。


「それではマサヨシ様、くじを引いてください」

「俺が引くのか? メイが引いた方がいいんじゃないか?」


 何を隠そう、俺はくじ運が良くない。


「いえいえ、マサヨシ様は勇者様なんですから」

「いやいや、メイは王に仕える優秀なメイドなんだから」

「いえいえ、マサヨシ様が」

「いやいや、メイが」


 これじゃあ、埒が明かないな。

 そうだ、こういう時は。


「じゃあ、俺がやる!」

「それなら、私がやります!」

「わう、わふわん!」

「「どうぞどうぞ」」


 決まったな。

 最初からこうすれば良かったんだ。


 ガサガサッ

 カイは紙の海の中から、1枚の紙を咥えて取り出す。

 それをメイが恭しく受け取る。


「それでは、僭越ながら不肖メイが発表させていただきます。ドゥルルルルルル……」


 関係ないけど、メイめっちゃ巻き舌上手いな。

 全然関係ないけど。


「……デン! エントリーナンバー23番『3つのカップの内1つに唐揚げを入れ高速でシャッフルし、どこにあるかを当てるやつ』に決定しました! パチパチ」


 さすがカイ。食いしん坊だから唐揚げのゲームを引き当てたな。


 ……いや、なんで唐揚げ!?

 このゲームたまによくあるけど、中身はボールとかでしょ!


「こんなゲームあった?!」

「はい。唐揚げの屋台が、客寄せのためにやってましたね」


 そうか。

 まぁ、俺としてはどのギャンブルでもいいから、別に文句は無いが。


「そういや、金策っていくらくらい必要なんだっけ?」


 金策としか聞いてなかったから、どのくらい稼げばいいのかわからん。


「1000万Gです」

「……1000万G!? このゲームじゃそんなに稼げなくない?」


 思ったより大きい額で驚いた。

 しかし、メイは当然という雰囲気でめっちゃ早口に答える。


「稼げます。まず唐揚げ10個入りを頼むと1回挑戦でき、当たると唐揚げが1個追加でもらえます」


 ふむふむ。

 チョコバナナの屋台で、ジャンケンに勝つともう1本もらえるみたいな感じね。


「唐揚げ購入に追加して100Gを払うと2回連続のゲームに挑戦できます。ここで2回連続で当てることができれば、次回唐揚げ10個無料券がもらえます」


 なるほど……?


「このように追加でお金を払うことによって、どんどん良いものがもらえるようになります。我々が目指すのは、追加で10万Gの5回連続です。5回連続正解できれば、賞金1000万Gを手に入れられるのです!」

「絶対詐欺じゃん!? こんなの相手の方がイカサマ使ってくるよ!」


 だって1000万Gですよ?

 そんな大金本当にもらえるか?


 単純に考えて、1回当たる確率が1/3。

 5回連続だと1/3の5乗だから……1/243か。

 確率通りに243回に1回賞金が出るとすれば、2430万の売上げで1000万の賞金だ。

 意外といい感じの計算結果になったな。

 

「意外と詐欺じゃないかもな」

「まぁ、もし10万G負けたとしても、王のへそくりからパクってきたお金なので問題ありません」

「王ってへそくりしてるの!?」


 王がへそくりしてるのも驚いたが、王からお金パクってるがバレたら負けても負けなくてもヤバいのでは……?


「王は王妃からお酒を止められているので、へそくりでこっそり買って飲んでいるのです。その買い出しの際に少しずつくすねたので、バレていませんし、バレていたとしても王妃の手前、公にはできないでしょう」

「メイさん、予想に違わずしたたかですね」


 俺もこれくらいしたたかにやれていれば、前の職場でも上手く立ち回れたのだろうか。


 俺は邪念を払うように首を横に振ると、その考えをふき飛ばす。

 昔のことを今更考えても仕方ない。

 これからのことを考えよう。


「それでは、明日から動体視力を鍛える特訓ですね」

「特訓!? メイ、熱でもあるのか? イカサマじゃなくて、実力で勝負しようなんて……」


 これは明日雨でも降るんじゃ……いや雪か……はたまた槍が降るかもな。


「失礼ですね。私だって特訓で……」


 メイは目を伏せ、そこで言葉が詰まる。

 俺もちょっと言い過ぎたか。


「そうだよな。すまん、メイ」


 メイだって本当はイカサマじゃなくて、実力で勝負して勝ちたいに決まってるよな。


「……マサヨシ様を苦しめて、苦痛にゆがむ顔を見て楽しみたい、という欲求はあるんです」

「ですよね!?」


 明日は快晴だな。

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