第四話「天然たい焼き、下から食うか?横から食うか?」
本日、4話更新の4話目です。
そして、俺は犬を連れている。
可愛い柴犬だ。
「さっきまでグダグダしてたのに、展開早くね?」
「読者の皆さんは早く冒険に出て欲しいと思ってるはずなので、こういうところは巻いていきましょう」
「読者の皆さんって何!?」
メイってたまに意味わからないこというよな……
……たまにじゃなくて、大体いつもか。
「名前はいかがいたしましょう?」
名前か……
そうだなぁ、嫁がソラだから、海がいいかな。
「よし決めた。カイにしよう!」
「良いお名前ですね」
「よろしくな、カイ~」
そう言って、カイの顎の下を撫でてやる。
「はっはっ、わん!」
カイも嬉しそうだ。
そうやってしばらく撫でていると、あることに気付いてしまった。
「そういや俺、魔王を倒したら元の世界に帰っちゃうんだよな。そしたら、また動物愛護センター行きになっちゃうのか……」
カイは何もわかっていないようで、円らな瞳でこちらを見上げている。
「マサヨシ様、ご安心ください。マサヨシ様が元の世界に戻ってからも、私がカイ様のお世話をいたします」
メイが真剣な眼差しで、真っ直ぐ俺を見据えている。
いつも変なことばかり言っているが、根は優しい奴なんだな。
「あぁ、メイに任せるよ。約束な」
「お任せください。私は、約束を破ったことは……1度しかありません」
急に深刻になった!?
こういうのって、親友と約束したけど不可抗力で約束を守れず、しばらく会う機会を失い、後から親友が亡くなったことを知って後悔するやつだよな。
「あの……何と言っていいものか……」
「昔、友達とした約束なのですが……」
やっぱり、そうか。
ツラかったよな。
「……たい焼きは、頭から食べようねって。ですが、実は私、胸ビレから食べる派なんです」
「どうでもええわ!!」
心配して損したわ。
「どうですか? 重い気分は晴れましたか?」
こいつ、本当は俺のことを心配して……
……いや、胸ビレからどうやって食べるんだよ!?
超少数派の背ビレ派かと思ったら、胸ビレ!?
絶対俺のことからかって、楽しんでるやつだ、これ。
「さて、次は金策ですね」
「金策かぁ。金策ってどうやるんだ? やっぱり魔物を倒して素材を売ったりするのか?」
旅をするにも、装備を整えるにも、お金は必要だもんなぁ。
「それでもいいのですが、時間がかかり過ぎて、アニメの放送時間に間に合わなくなる可能性があります」
おぉ、今回は真面目に考えてくれているようだ。
これまでとは、メイの目の輝きが違う。
「じゃあ、どうやって稼ぐんだ?」
俺が問うと、メイが前のめりになって言う。
「どう稼ぐかというと……」
俺も前のめりになって聞く。
「どう稼ぐかというと……?」
メイは自信たっぷりに答える。
「カジノです!」
「博打かよ!!」
メイの目の輝きが違うと思ったら、目がお金になってやがる!
メイはギャンブルが得意なのだろうか。
俺はギャンブルっていうと正義とは程遠い感じがして、手を出したことないんだよな。
「確かに当たれば一気に稼げると思うが。メイはギャンブル得意なのか?」
「ふっふっふ、マサヨシ様、カジノで必ず勝てる方法をご存知ですか?」
メイは得意げに、右手の人差し指を一本立てて聞いてくる。
可愛いとムカつくのちょうど中間だな。
だが、必ず勝てる方法か……
そういえば、ブラックジャックには必勝法があると聞いたことがあるな。
「ブラックジャックは出たカードを全て暗記すると、勝てるんじゃなかったか?」
「こちらのカジノでは、システム上、配られるカードはランダムなので、その方法は取れません。ギャンブルの必勝法といえばイカサマですよ、イ・カ・サ・マ」
「ミスタースクィッド!?」
「それはイカ様です!」
ビシッと人差し指をこちらに向け、『決まった』みたいな雰囲気を出しているメイ。
メイもツッコミやってみたかったんだな。
「イカサマなんて簡単にできないでしょ。バレた時が怖いし」
イカサマなんてバレたら、黒服で強面の屈強な男達に、奥の部屋へと連れて行かれてしまう。
魔王よりも怖いかもしれない。
「イカサマは推奨されているので大丈夫ですよ。裁判所でも、バレなければイカサマは無罪と判決が出ています」
「いや、それ推奨されてるわけじゃないよね!? ただ証拠不十分で罪に問われなかっただけだよね!?」
「あと、こちらも用意してあります」
メイはサイコロを俺に手渡す。
「このサイコロがどうかしたのか……って、これシゴロ賽じゃねーか!!」
俺の手の中にあったのは、123が無く456が2面ずつあるイカサマサイコロだった。
「こんなの使えるわけないだろ!」
全くメイは何を考えているのか……
「おかしいですね。私が見た物語では、これと1しか無いサイコロで大稼ぎしていたのですが」
「馬鹿もーんっ!」
どんな物語に影響を受けてやがる……!
こんな話、ノーカウントだ、ノーカウント。