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第二話「美人は飽きる以前に直視できない」

本日、4話更新の2話目です。

 床の感触が戻り、眩しさも止んだ。

 そっと目を開けてみると、数メートル先にイケオジが座っている。

 豪華な椅子に座って、きらびやかな服を着て、王冠をかぶっているので、おそらく王様だろう。


「おお勇者よ! 我らの召喚に応じ、馳せ参じたこと感謝に値するぞ」


 いや、応じた記憶がないんだが?

 明らかに強制的だったよね……?


「あ、あの……」

「そなたには魔王討伐を命ずる。頼んだぞ」


 魔王討伐!?

 こちとら正義”感”だけを振りかざし、武力は一切行使してこなかったもやし男だぞ!!

 これから楽しみにしていたアニメを観なくてはならないのに、こんなことしている場合じゃない。


「俺は故郷に嫁を残してきているんです! それに、魔王討伐なんて無理です! 元の場所に帰してください!!」

「我らの召喚に応じた以上、魔王討伐は責務である。そもそも、そなたを元の世界に戻す方法は持ち合わせておらん」


 嘘だろ……

 もう元の世界には帰れないのか……?

 俺はその場にくずおれる。


「まぁそう落ち込むでない。こんな言い伝えがある。"魔王がこの世より消滅した時、光の柱が立ち上る。そして、勇者は元の世界に戻り、この世に平和が訪れる"とな」


 そんな都合のいい言い伝えあるか?


「では、頼んだぞ。私は忙しいのでな、そなたにはメイドを一人付けるから、あとはそのメイドに聞き給え」


 王はメイドに目配せをして、去っていこうとする。


「ちょ、待てよ!」


 恥ずっ!

 焦って某アイドルっぽいセリフを言ってしまった。

 いや、そんなのこの世界の人は知らないだろうし、今はそれどころではない。


「支度金とか装備とか、なにか支給されるものは無いんですか!?」


 俺の言葉に、去ろうとしていた王は足を止めると、こちらを振り返る。


「そうじゃな。確かにこれから厳しい道のりになるだろうからな」


 おっ、これは良い手応えがあったようだ。


「それでは――」

「だが、無いものは無い!! 他国との戦争で疲弊しているところに、魔王が現れてな。活発化した魔物と戦うために停戦して、今の今まで戦争していた国と共同戦線を張っている。そんなギリギリの状況なんじゃ」


 上げてから落とすんかい!!

 大変なのはわかるけど、俺の負担大き過ぎるだろ……


「わかってくれたかの? では、さらばじゃ!」


 王はそう言い残し、今度は声を掛ける隙もなく、足早に去っていった。


 呆然と立ち尽くす俺。

 正義感を振りかざしていた頃の昔の俺だったら、この世界の人のために魔王を倒すという使命に燃えていたかもしれない。

 でも、もう俺は正義感を振りかざすのはやめたんだ。

 本当に現実の人間なんて、自分勝手なやつばっかりだ。

 ソラたんが恋しいよ……


「妄想にふけっているところ、失礼します」

「あ゛!?」


 半ギレぎみに振り返ると、金髪ロングでジト目の美人が無表情にこちらを見つめていた。


「これから勇者様の身の回りのお世話をさせていただきます、メイドのメイと申します」

「あ、どうも。マサヨシと申します。メイドでメイさんなんて、覚えやすくていい名前ですね。あっ、勇者様なんて柄じゃないので、マサヨシでいいですよ」


 メイドでメイってどこがいい名前なんだよ、俺!

 もうちょっとマシなこと言えよ、俺!


 そう、俺は美人に弱かった。

 めっぽう弱かった。

 完全に舞い上がっている。


「お褒めいただきありがとうございます、マサヨシ様。私はただのメイドですので、呼び捨てで構いませんし、敬語も必要ありません」


 おぉ、さすが王城に仕えるメイド。

 所作が洗練されているし、気遣いもできる。


「ちなみにメイが姓でドが名前なので、ド・メイ。マサヨシ様の国の言い方では、メイ・ドになるでしょうね」


 メイは無表情だが、わずかに左の口角だけ上げ、そんなことを言う。


 はっはっは、メイドのメイ・ドね。

 美人で無表情だからとっつきにくい人かと思ったら、ユーモアにあふれる人のようだ。

 ん?


「って、おいおいおーい! なんで俺の国のこと知ってんの!?」

「多分、そんな感じのお顔をされていたので」


 たしかに黒髪黒目で平たい顔ですけど……

 見ただけで文化までわかるほど日本人顔してるかな……?


「冗談はさておき」

「どこからどこまでが!? ねぇ、どこからどこまでが冗談なの!? 冗談で済むような話してなかったよね!?!?」

「……冗談はさておき」


 2回言った……!

 この人、2回言った……!!

 これで突き通す気だ……!!!


「それでは改めまして、魔王討伐までの流れを説明させていただきます」

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