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新たな調停官の登場

荘厳な調停宮殿。大理石の床に光が反射し、王国の紋章が刻まれた魔法陣が静かに輝いている。貴族たちは華やかな衣装をまとい、広間に集まっていた。緊張感が漂う中、議長が席に着き、調停会議の開幕を告げようとする。


その時、広間の扉が静かに開いた。


「お待たせいたしました。」


透き通るような声が響くと同時に、白いドレスを纏った一人の令嬢が現れる。ドレスは彼女の細身を際立たせ、金髪のカールが揺れるたびに光を反射して美しく輝いていた。


「ロザリン・エヴァレットと申します。本日より調停官として、この会議に参加させていただきます。」


広間にいる貴族たちのざわめきが一斉に広がる。


「なんと美しい方だ!」

「調停官にふさわしい品格だ。」


アメリア・ヴェルトンは冷徹な表情でその様子を見ていた。

ロザリンが柔らかな笑みを浮かべながら議長に一礼し、彼女の目がアメリアに向けられる。


「アメリア様、初めまして。」ロザリンは天使のような微笑みを浮かべて言った。

「王国で名高い調停官でいらっしゃるあなたと同席できるなんて、光栄ですわ。」


「ご丁寧にどうも。」アメリアはわずかに微笑んで答えるが、その目はロザリンの笑顔の奥を冷静に見抜いている。

(純粋無垢を装っているけれど…この女、ただ者ではない。)



議長が調停会議の開始を告げ、議題が提示される。今回の争点は、名門貴族A家とB家による領地を巡る紛争だった。


A家は「この領地は先祖代々我が家に属している」と主張し、B家は「歴史的な所有権は我が家にある」と反論している。


ロザリンは初めての調停官として意見を述べ始めた。

「A家の主張には一理ありますわ。」柔らかな声が広間に響く。

「しかし、B家の言い分にも耳を傾けるべきだと思います。」


ロザリンは双方の言い分を巧みに擁護し、場の空気を和らげた。


男性貴族たちはすっかり彼女の言葉に魅了されている。

「なんと公平な意見だ!」

「調停官として素晴らしい才能だ。」


一方、アメリアは冷静にロザリンの発言を分析していた。


「ロザリン様。」アメリアが口を開く。

「その意見は一見公平に見えますが、具体的な解決策を提示していませんね。」


ロザリンは無邪気な笑顔を浮かべたまま答える。

「まあ、確かにそうかもしれませんわ。でも、初めての調停ですもの。まだまだ学ぶことが多いのです。」


その目は挑発的だった。




調停は進み、A家が提示した証拠が不十分であることが指摘される。B家側の主張が強まり、A家は次第に追い詰められていく。


その中でロザリンは再び意見を述べた。

「調停の場は、あくまで双方にとって公平であるべきですわ。A家にももう少し時間を与え、より強固な証拠を提示する機会を設けるべきだと思います。」


彼女の提案に貴族たちは賛同し、A家に時間が与えられることになった。


アメリアはその様子を静かに観察していた。

(なるほど。ロザリンはA家を擁護するふりをして、B家への圧力を和らげているのね。)



会議の休憩中、ロザリンがアメリアに近づいてきた。

「先ほどは鋭いご指摘をありがとうございました。さすがはアメリア様、私ももっと勉強しなくては。」


「ご謙遜を。」アメリアは表情を崩さずに答えるが、ロザリンが距離を詰めてくるのを感じた。


「実は、今日の議題について少しお話ししたいことがあるのです。」ロザリンが小声で囁く。

「この調停、どうやら裏で動いている力があるようですわ。」


アメリアは眉をひそめる。

「何を言いたいの?」


「まあまあ、焦らないでください。」ロザリンは微笑みながらアメリアの耳元で囁く。

「私はあなたの敵ではありませんわ。ただ、どちらが“上”に立つか…試してみたいだけですの。」




調停が再開され、ロザリンが突然新たな証拠を提示した。それは、A家が隠していたとされる不正な書類だった。

「この書類をご覧ください。B家の主張を裏付ける証拠として重要だと思いますわ。」


広間がざわめきに包まれる。貴族たちは驚きの声を上げた。


しかし、アメリアは冷静にその書類を手に取り、一瞥した。

「この証拠…どうやら捏造されたもののようですね。」


ロザリンが驚いた様子を装いながらも、内心ではほくそ笑む。

(この程度で私を崩せると思っているのかしら?)




調停は引き分けで終わり、ロザリンは満足げに微笑んでいた。

「今日の調停、とても勉強になりましたわ。また次の機会にご指導くださいね。」


アメリアは微笑みを返しながら静かに言葉を返す。

「次はもっと真実を用意していただけると助かります。」


ロザリンが去った後、エドワードがアメリアに話しかけた。

「新しい調停官…何か裏がありそうですね。」


「ええ。」アメリアは静かに言った。

「あの令嬢、単なる飾りではなさそうね。彼女の目的が私を超えることなら…その挑戦、受けて立つわ。」


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