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調停の幕開け



朝、調停宮殿


アストリア王国の首都にそびえる調停宮殿。その大理石の外壁が朝陽に染まり、まるで黄金の輝きを放っているかのようだった。

中庭では、豪奢な馬車が次々と到着し、貴族たちが緊張した面持ちで大広間へと足を運んでいた。


調停宮殿の広間は壮麗そのものだった。床一面に敷かれた白大理石には金色の文様が刻まれ、中央には王国の紋章を模した巨大な魔法陣が輝いている。

この魔法陣は、調停の公平性を確保するために設置されており、証拠の正当性を魔術的に検証する力を持つ。


壇上に座る調停議長が、威厳たっぷりに開会を告げた。

「本日、アストリア王国の名誉を賭け、A家とB家の領地問題を裁定する。」

重々しい声が広間中に響き渡り、貴族たちは息を呑むようにして耳を傾けた。




壇上に立つヴィクトール・オルバスは、燃えるような赤髪を陽光に輝かせ、琥珀色の瞳を鋭く光らせていた。その堂々とした姿は、まさに「名門貴族」を体現している。

彼は自信満々に広間を見渡し、ゆっくりと口を開いた。

「諸君、今日こそ正義が証明される日だ。我がB家が正当な領有権を持つことを、疑う余地などない。」

その声は広間中に響き渡り、貴族たちを圧倒する力強さがあった。


彼の隣に立つB家当主も満足げな笑みを浮かべている。




一方、貴族席に優雅に座るアメリア・ヴェルトン。銀髪が光を受けて淡く輝き、淡いブルーの瞳が冷たくヴィクトールを見つめていた。

彼女はわずかに口角を上げ、まるでヴィクトールの振る舞いを嘲笑するかのようだった。


(自信たっぷりね。いったいどんな手を使ってくるのかしら?)

アメリアの心には冷静な計算が巡る。彼のような男が提示する「証拠」に隙がないわけがない、と。




ヴィクトールはゆっくりと手を掲げ、赤い炎の魔法陣を浮かび上がらせた。魔法陣が輝きを増すと、空中に古びた地図が投影される。

「ご覧ください。この地図こそ、我がB家が領地を正当に所有していた証拠です。」


広間中がざわめきに包まれた。地図には細かい筆跡で領地の境界が記されており、誰の目にもそれが精巧な資料であることが明らかだった。


「これほど明確な証拠を提示された以上、A家に反論の余地はないでしょう。」

ヴィクトールは勝ち誇ったように微笑みながら、視線をA家当主に向けた。




しかし、アメリアは動じることなく、その地図をじっと見つめた。

(なるほど…けれど、あまりにも完璧すぎる。捏造の可能性を探るべきね。)


彼女は隣に座るエドワードに低い声で指示を出した。

「エドワード、この地図の書体と筆跡を確認して。B家の公式記録と一致するかを調べなさい。」

「承知しました、アメリア様。」


エドワードは即座に魔力を込め、「記憶の魔法」を発動する準備を始めた。



さらにヴィクトールは、B家が正当であることを補強するために幻影魔法を使った。

炎の中から映し出された幻影には、A家の兵士がB家の領地を侵略している様子が映し出される。


「これが証拠だ。我がB家がいかにA家の不正に苦しめられてきたかが、一目瞭然だろう。」

ヴィクトールの声が響き渡り、貴族たちが動揺し始める。

「なんと…これではA家に分が悪いのではないか。」

ざわめきがさらに広がる中、A家当主は不安げな目でアメリアに助けを求めるような視線を送った。




そんな中、アメリアが静かに立ち上がった。その動き一つで広間の空気が変わる。

「興味深い映像ですね。」アメリアの声は冷たく、だが広間中に響くほど明確だった。


彼女は幻影に映る兵士の盾を指さし、淡々と語り始める。

「この紋章、B家のものに似ていますが…少しだけ配置が違うようですね。おそらく古い時代のものを模倣しているのでしょう。」

貴族たちは再びざわめき始めた。




幻影の矛盾点を次々と指摘するアメリア。しかし、ヴィクトールは焦りを見せず、笑みを浮かべたままだ。

(この程度では揺らがないつもりね…けれど次は違う。)アメリアは冷静に微笑み、心の中で反撃の準備を進めていた。


退出する際、ヴィクトールが囁く。

「次はもっと完璧な証拠を用意してやる。」

アメリアは微笑みながら答えた。

「どうぞ。その日が来るなら歓迎するわ。でも…あなたが勝つ日は永遠に訪れないでしょうね。」


夕焼けに照らされる調停宮殿。


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