表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

裏切りのギタリスト

青春恋愛バンドモノストーリーです。

【熱血ロック魂】と言うバンドを結成したアツシでしたが、

仲間だったギタリストのナナコに裏切られます。

バンドのメインであるギタリストが居なくなってしまった。さあ、どうする?

アツシ「ナナコ!お前…バンドをやめるだと!?そんなの許されると思うなよ!」


胸ぐらを掴み、ギタリストのナナコの頬をぶん殴ろうとする。


タカシ「おいアツシ、そんなにキレるなって…さすがにキレたくもなるけど、ナナコは女の子だから、な!?」


仲間のキーボードのタカシが止めに入る。

ドラマーのツヨシはのんきにへらへらと笑っている。


ツヨシ「ははは…、ヘッドハンティングされたからって、そっちに行くなんてな。俺もお前を心底見損なったわ。俺にも一発殴らせろよ。」


タカシ「待てよ、制裁じゃないんだから…」


アツシ「歌詞を皆で案を出し合って書いてバンドもこれからって時に、俺たちで考えた曲も!デビュー曲ごとあっちに持って行かれたんだぞ!盗まれたんだ!これが黙っていられるか!俺たちの青春が詰まっていたんだぞ!」


ナナコ「ふん…、ほとんど私が考えてやったんじゃないか。あっちに持っていこうと勝手だろ。」


タカシ「何だと…!!」


ナナコ「何…アンタも来るのか?これ以上やるんなら寄ってたかって乙女に暴行加えたって訴えるから。」


ナナコ「とにかくあたしはデビュー前に脱退するから。」


ツヨシ「何で…そこまでして脱退したいんだ?」


ナナコ「アンタたちの素人っぷりのバンドについていけなくなったんだよ!私は前もっと腕の良いバンドに居たんだよ?」


ナナコ「だけどメンバーの1人が大変なことになってバンドがダメになって!」


ナナコ「仕方ないからアンタたちのバンドに加入したけどこのメンバーは誰もロックバンドの何たるかを分かってない!」


ナナコ「『熱血ロック魂』?名前だけね。熱いハートだけでロックバンドやって行けると思わないで。…じゃあ。」


ナナコは捨て台詞を残し、熱血ロック魂から脱退してしまった。

俺たちは『熱血ロック魂』。略して『ねつだま』。

まだ自分たちの曲が1曲もないまま駆け出し中の

メジャーデビューを目指して頑張っている大学生だ。

そんな中、ようやく完成した俺たちのデビュー曲を盗まれ、脱退されたのだ。

アツシは熱血漢なのでキレてしまう気持ちも皆は重々理解はしている。

もちろん、2人もナナコが許せないでいる。


アツシ「ちきしょう!くそう!バカにしやがって…」


タカシ「でも駆け出しなのは事実だから仕方がないよ…ナナコに任せきりだったのも事実だし…」


アツシ「そっか…なら、俺たちで今から歌詞と曲を書くぞ!」


タカシ「俺らそういうことも出来ないバンドなんだよねぇ…俺吹奏楽でやってたから演奏出来るだけだしな。」


ツヨシ「それに今からじゃとても大学祭にも間に合わないよ。」


アツシ「でもエントリーしちまったんだろ?やるしかねぇんだよ!俺は青春をロックに込めて歌いたい!」


タカシ「うん…今気付いたんだけどさ。」


タカシ「ギタリスト…居なくなったよね。」



タカシ「でもさ、アツシお前弾けるだろ?ギター。」


アツシ「弾けるけど…」


ツヨシ「何だ、弾けるのか、なら安心だな。」



ツヨシ「え?何で無言?何か問題あるの?」


タカシ「アツシと俺は幼馴染なんだけど…今ギターを弾けないんだ。」


ツヨシ「でもそんなこと言ってる場合じゃないだろ?」


ツヨシ「何があったのか言ってくれないか?言えないなら、良いけど…」


アツシ「話しても良い。」



◇◆◇◆◇



俺がロックに目覚めたのは同級生のマリコにギターを教わったからで。

マリコ率いる女子ロックバンド『マロンロマン』にトリコにさせられたからだ。

ギターを教えてほしいとボーカルでギタリストのマリコに頼んだ。


マリコ「良いけど、高く付くかもよ?」


アツシ「特大パフェでも何でもおごってやるから!」


マリコ「それならオッケーよ!」



◇◆◇◆◇



アツシ「と言うことで、ギターを弾いたこともない俺に手取り足取りみっちり教えてくれたんだ。」


ツヨシ「何だ、良い話じゃないか。」


タカシ「マリコには彼氏が居てな…」


タカシ「それがスズシだったんだよ。」


ツヨシ「え……あのスズシか?」


タカシ「そう、スカルキッズのスズシだよ。」


ツヨシ「ナナコがデビュー曲を持っていったグループじゃないの?何かやばい予感がするな。」


アツシ「ナナコは多分、手柄をスズシに渡して、振り向いてもらおうとしているんだ。」


アツシ「でもスズシはそんな軽い男じゃない。俺は…分かってる。」



◇◆◇◆◇



ーーー一方その頃…

スカルキッズに盗んだ曲を提供するナナコが居た。

これで自分をスカルキッズに加入させてほしいと交渉しているのだ。


ナナコ「ねぇ、これ!これって良い曲でしょ?ねつだまから奪って来たの。」


スズシ「…返して来い。」


ナナコ「どうして!?この歌詞も曲もほとんど私が考えたのよ!」


スズシ「他人の歌なんか歌えねぇよ。」


ナナコ「私は向こうに戻る気はないわ。」


ナナコ「もしかして…あなた、まだマリコのこと忘れられないの!?」


スズシ「そうだ。スカルキッズは…マリコとの思い出が詰まってる。このバンドは男だけの3人体制で行く。」


ナナコ「私も仲間に入れてよ!」


キヨシ「分かってあげてよ。スズシの気持ちをさ…」


ナナコ「悔しい!なら、マリコが居たマロンロマンのギタリストの座を奪ってやる!」


ナナコ「どうせもうマリコは居ないのよ!?未練がましい男ね!良いわ!こっちから振ってやる!」


ヤスシ「あーあ、良いの?せっかくねつだまを抜けてこっちに入るって言ってくれたのに。」


ヤスシ「才能ある子だよ?こりゃ、大事な人材失くしたね。」


スズシ「勝手にヘッドハンティングしたのお前だろ。ヤスシ。責任はお前にあるぞ。また同じ過ちを繰り返しやがったな!」


ヤスシ「おーおー、やんの?あんまアザ出来るとやばいよ?次の大学祭、スカウトさん来るみたいだからさ。俺たちならメジャーデビュー出来るかも知れないから。」


ヤスシ「ねつだまなんかライバルじゃねぇさ。レベチよ。」


スズシ「甘いこと言ってると、痛い目見るぞ。今日は練習終わりだ。解散。」



◇◆◇◆◇



デビューもまもなく、やりたかったバンドをいきなり、取り上げられた気分になって。


ぼんやり、大学の中の広場にあるベンチに俺は座っていると、すっと出されたミネラルウォーター。

それを差し出してくれたのは…

スカルキッズのスズシからだった。


スズシ「散々な目に遭ったな。ナナコが悪いことをした。申し訳ない。」


スズシ「実はウチのヤスシがアツシを裏切って貶めるように仕組んだみたいで…これに凝りず頑張ってくれ。」


アツシ「スズシ…お前!俺と口利いてくれるのか…?」


スズシ「悪いことは悪いから。謝りに来た。」


【あの日】、初めて会ってから、それっきり口を利いていなかった…

話しかけてくれて俺はとても嬉しかった。


アツシ「お前は漢の中の漢だよ…!ちょっとナナコに激怒したけど、今は落ち着いたよ。」


スズシ「俺で出来るなら、何か手伝わせてほしい。」


アツシ「それはダメだ…お前はスカルキッズのボーカルでギタリスト、歌詞も曲も手掛けているんだから。」


スズシ「お前もギターはマリコに教わって出来るだろ…?」


アツシ「マリコ…元気にしてるのか?」


スズシ「元気だよ。お前も会いに来い。」


アツシ「いや…俺は…合わせる顔がない。お前にも…」


スズシ「俺たちに並ぶのなら、お前がボーカルもやってギターもやれ、マリコと約束したんだろ。」



◇◆◇◆◇



マリコとの忘れられない過去…

それは良いことだらけではなかった。

メンバーに語ったことが全てだけではなくて、


忘れられないトラウマだってあったのだ。


学校帰りで信号待ちをしていた時、マリコが俺の耳元で囁いた…



マリコ「ねぇ、私…スズシの彼女だけどさ…」


マリコ「熱心に頑張るアツシが好きになっちゃった。そばで応援したいの。」


マリコ「スズシを諦めて、アツシの方へ行きたい。」


まさかの告白だった…

マリコがそう思っていたなんて。


アツシ「…俺は、マリコにギターを教わって感謝してる。ただそれだけだ。」


アツシ「恋愛にも興味ないし、そのスズシさんって人にも悪いよ。」


マリコ「…そう…でももう私たち大学中で噂になってるよ?」


アツシ「噂なんて関係ねえ。でもスズシさんに勘違いされてぶん殴られそうで怖い。」


アツシ「ここまで教えてくれてありがとう。」


アツシ「だからもう…会うのはよそう。スズシさんにも悪い。俺への気持ちは大きくなる前に忘れてほしい。頼む、この通りだ…」


マリコ「…バカ!そんな言い方ってない!こんなお別れもないわ!」



急に走り出したマリコ。



アツシ「あっ待て!危なーーー!」



…マリコは車にはねられ交通事故に遭い、すぐに病院へ搬送された。


救急治療室前で待っているとそこに現れたのは…



スズシ「お前がアツシか…」


アツシ「そうです…もしかして…」


スズシ「マリコの彼氏のスズシだ。」


俺はここでスズシと初めて会った。


アツシ「お願いです!!!俺をぶん殴ってください!気が済むまでで良いです!!!」


アツシ「マリコは…マリコは…!!!」


アツシ「心肺停止の意識不明の重体になってしまいました…!!!」


アツシ「全部俺のせいだ!俺が招いたことです!マリコはマロンロマンのボーカル、ギタリストなのに歌うこともギターを弾くことも出来なくなってしまったッ!!!この通りです!!!」


スズシ「…殴りゃ、許されると思うか?」


アツシ「…いいえ…」


スズシ「もう二度と…俺とマリコに近寄るな。」


スズシにも悪い印象を与えてしまった。

そして何より、憧れていたマロンロマンは活動休止してしまった。


ボーカルでギタリストが居なくなったからだ。


それから…会ってなかったけど…

俺はマリコに


◇◆◇◆◇


「私が教えてあげたんだから、ちゃんとバンドデビューしなきゃダメだからね!」


と言われていたので、バンドを絶対に結成したいと思った。

バンド活動するのが俺の夢だったからだ。

それが…大学でマロンロマンの次に人気のスズシ率いるスカルキッズと敵対することになろうとも…

幼馴染で吹奏楽をやっていたタカシをキーボードに誘い、

バンドの経験のあるお姉さんからドラムの知識を譲り受け、趣味程度にかじっていた同級生のツヨシを誘ったのだった。


実力のあるナナコがギタリストで加入してくれて力強かったが、

あの通り、デビュー曲を書いたらまんまと持っていかれ裏切られてしまった。


ギタリスト…


‟俺たちに並ぶのなら、お前がボーカルもやってギターもやれ、マリコと約束したんだろ。‟


ギターを封印していたが、スズシに俺がギタリストをやれと言われた…

なら、やろう…マリコの彼氏のスズシから、そう、許されたのなら。


俺はギターを再び手にすると誓ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ