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蜂蜜前夜  作者: 梅川桃
4/4

4.150年後


 一台の車が止まり、中から大柄な男がノソッと降りてくる。辺りを見回し、呆れたように笑い出す。

 そこは、空き地と雑木林しか無い寂しい場所で、『Honey Springs Battlefield 』と書かれた看板だけが、妙な存在感を放っているだけだった。


「テンション下がんなー」


 言いながら、辺りをうろうろする大男。直ぐ側に交差する道路があるにも関わらず、一台も通る様子は無い。再び笑う。


「予想はしてたけどよー、ははは!」


 広い空に向かって両手を広げる。


「なーんもねーのな!」


 大きな声が空へと消えていく。両手を下げ、ふぅ、と息を吐き出す。ザクッザクッと乾いた土の上を歩き始める。何も無いソコは、大男にとってどうでもよい場所で、ただ何となく暇だったから来ただけだった。

 数分うろうろしたが、直ぐに飽きて車に乗り込もうとした。と、その時、大男の車から少し離れた所に、一台の車が止まった。ギィーと音を立ててドアが開く。中からは、赤褐色の肌に艶やかな長い黒髪の男が降りてきた。

 大男の方をチラリと見ると、何事も無かったかのように、看板に向かって歩き出す。そして、書かれた文字をジッと眺め、ソッと目を閉じた。

 その様子を、大男は静かに見つめている。男は看板から視線を外し、大男へと向けた。そして静かに口を開く。


「面白いか?」


 静かに低く響く男の声に、大男が体を竦める。


「あ、邪魔して悪かったな」


「別に邪魔ではない」


 男がゆっくりと近付いて来る。無言のまま、すれ違う男。大男が声を掛ける。


「アンタ、何してたんだ?」


「精霊と対話していた」


「精霊?」


 言われて笑いが込み上げる。


「対話できんの?」


「ああ」


「へぇ~、すげーなー」


「お前は出来ないのか?」


 不思議そうな顔で大男を見る。


「普通、出来ねーよ」


「……そうか。つまらんな」


 少し小馬鹿にしたような声に大男がムッとする。


「なんだよ、んじゃアンタは面白いのかよー」


「さぁな」


 言いながら男は車に乗り込む。慌てて大男が男の車の運転席の窓を叩く。


「ちょっと話さねー?」


「………………」


「コーヒー奢るからさー」


 不思議そうな顔をしたかと思ったら、急に笑い出す。


「何笑ってんだよー」


「ふふ、お前、面白いな」


「なんだよそれー」


「別に悪いことじゃない。ついてきな」


 大男は慌てて車に乗り込む。それを確認してから、男はアクセルを踏み、車を走らせた。大男も男の後について行く。

 走る車の中、二人は理由も無く、笑みを零していた。




アメリカ南北戦争を舞台にしたブロマンス風味な短編でした

もうかれこれ10年近く前に

とあるアンソロジー企画に参加させていただいた時に書いたお話なので

現在の『Honey Springs Battlefield 』とは違うかもしれないと思い

企画参加当時の『150年後』のままにしました

なので最後の舞台は2013年頃のお話です


こちらに掲載するにあたって数年ぶりに改めて読み返しましたが

あーやっぱこのお話好きだわぁ~

と自画自賛

まあ自分が読みたいものを書いてるから好きなのは当たり前なんですがね


短編ではありますが

最後までお付き合いいただきありがとうございました


また気まぐれに過去作をお披露目するかもしれません

その際にはまたご覧いただけましたら幸いです

引き続きどうぞ宜しくお願い致します


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