1.蜂蜜前夜
アメリカ南北戦争を舞台にした短編です
ご興味ありましたら是非
民家も何も無い荒れ地に、兵士が集まり始める。兵士達と共に、次々運ばれて来る大量の荷物は解かれ、幾つものテントが建ち、様々な武器や弾薬、食糧などの物資がそれぞれの場所へと運び込まれ、ものの数日で一つの小さな街のようなものが出来上がっていく。
物々しい様相に姿を変えつつも、そこには冗談を交えた会話が飛び交い、あと数日後には、敵の陣地へと歩を進め、戦いを始めるような雰囲気などは、まだ感じられなかった。陽が落ちると、それぞれの部隊が焚き火を囲み、作戦会議を兼ねた夕食を取る。
夕食と言っても、小麦粉やトウモロコシ粉を溶かしたものに、豆や塩漬け肉を入れたスープと、歯が欠けそうに硬いハードブレッドをそれに浸し、ふやけさせて食べる、というものだったが、それでも支給される食糧があるだけマシと思う者も少なくなかった。なぜなら、兵士の殆どが、奴隷、若しくは奴隷のような扱いを受けていたからだ。
片や遠く離れた地から、言葉巧みに未開の地へと連れてこられ、気付いた時には奴隷となっていた者。片や先住民でありながら、開拓民によって様々な理由で土地を奪われ、何時の間にか迫害される身分になっていた者。それぞれが抱く思いは複雑で、それでいて、ただ一つの願いは同じもの。それだけで集結した部隊も少なくはなかった。
そして、賑やかな夕食を終え、就寝までの時間を各々思い思いに過ごしていく。
開戦前夜はこんな感じで過ごしてんのかなぁ…
という妄想のお話です