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冒険者ギルドの死体処理班ネイル  作者: 三神カミ
第三章 Fランク冒険者パーティ漆黒の爪 編 
31/37

レイピア使いのミシャ



 僕とクロの冒険者パーティ【漆黒の爪】の初仕事は薬草採取に決まった。僕が受付に行くといつものようにリーゼさんが立ち上がり笑顔で迎えてくれた。




「どう? ネイル君にクロちゃん。初仕事は決まった?」

「はい。とりあえず、冒険者ギルドの【治療院】から依頼が出ている薬草採取にします」

「それがいいわ。まずは、新しいパーティに慣れるという意味も込めて簡単な依頼からこなすのがベストよ。でも気をつけてね、薬草採取っていっても場所によっては魔物が出るから」

「はい。ありがとうございます。じゃ、クロ、いくよ」




 僕が振り向くと、そこにクロはいなかった。僕は周囲をぐるりと見まわす。すると、カウンターから少し離れたテーブル席に座りクロが女の子と話している。誰だろう。クロに冒険者ギルドの職員以外に友人なんていたっけ。僕は不思議に思いつつ、そのテーブルに近づいた。クロと話している女の子の顔を見ると、どこかで見たことのある顔だと気が付いた。


 僕は声をかける。



「クロ、なにしてるんだよ」

「あ、ネイル様! この子ほら! 前に竜の森であったでしょ! ね!」

「え……たしかにどこかで……あ、あの時の! たしか、ミシャ?」



 ミシャは立ち上がって僕にお辞儀をした。確か、前にオオトカゲに襲われていた時に助けてあげた冒険者の女の子だ。ミシャは、どこか納得しきれない顔で僕にたずねてきた。




「あ、あの時は助けてくれてありがとう。わたしネイルの事はおぼえているけれど……」




ミシャはクロのほうに目をやる。クロは椅子から立ち上がってほほを膨らませる。




「ええ~、ひどーい。私がオオトカゲをまるっと倒してあげたのにぃ~」



 ミシャは眉をひそめて、首をかしげている。当然だ。あの時、クロはまだ竜の姿だったのだから、ミシャにわかるわけがないのに。まったく本当に秘密もくそもないな。僕はクロにちらりと目をやるとたしなめて、ミシャに顔を向けて話した。



「ミシャ、たしかあの時は二人組だったよね。もう一人は大剣使いのテレ、だったかな」

「ええ、実は、さっきまでテレも一緒だったんだけど。もう、魔物の討伐が怖くなっちゃったみたいで、冒険者をやめるっていいだしてね。たった今、私とテレの冒険者パーティは解散しちゃったの」

「え? そうなんだ……それは、災難だね」

「ええ、だからわたしどうしようかとおもって。ソロで依頼を受けられるほどの経験もないし。かといってほかにパーティを組めそうな人もいないから……」



 クロがミシャのとなりにすいっと体をすりよせて、ミシャと腕を組む。そして高らかに宣言する。




「ミシャ! 私達の冒険者パーティ【漆黒の爪】のメンバーになろう!」

「え? え? わたしが?」

「いいわよね! ネイル様!」




僕はクロの突然の提案に声が出ない。そんな僕をおいたままクロは話を進める。




「実はね、私たちも、できたてほやほやの冒険者パーティなの! ちょうどいいね!」



ミシャは困ったような表情ながらもどこかまんざらでもなさそうに見える。僕とクロを交互にみながら口を開く。



「もし、本当に入れてくれるならすごくうれしいけど、わたしまだ冒険者レベル3だし、まえの冒険者パーティはEランクよ? 二人は強そうだし、わたしなんか足手まといにならないかしら……」

「だいじょぶ! 私なんか冒険者レベル0だし、【漆黒の爪】はパーティランクFなんだから。つまりさ、このギルド内で一番よわいってこと! にゃははは!」




 こうしてクロの勢いに押されて、ミシャは僕たちの冒険者パーティに急遽入ることになった。僕は早速カウンターに向かい手続きをした。




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