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冒険者ギルドの死体処理班ネイル  作者: 三神カミ
第一章 Aランク冒険者パーティ黄金のタカ 編
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討伐の報酬




 数日後。


 僕は冒険者パーティ【黄金のタカ】の集会に参加する為、冒険者ギルドの酒場食堂に出向いた。ここ最近の討伐作戦の報酬を貰うためだ。



 僕が酒場食堂にはいると中は冒険者達でにぎわっている。むせかえるようなひといきれ。砂と血と汗の匂い。今はちょうど昼食前だ。


 見渡すと、いつものテーブルにほかの三人はすでに来ていた。リーダーの剣士アスター、斧使いモートン、炎の魔法使いシラ。


 僕が席に着くと、いつものようにモートンが不満そうな視線をじろりと向けて口火を切った。




「よう。おそかったな。ワイバーンでも運んできたのか?」




 僕がなにも答えずにいると、シラがモートンにわざとらしくたずねた。




「このまえ討伐したのは、小竜カリヨンドラゴンと、土龍オオトカゲの二匹だったっけ?」

「いや、三匹いた気がするけど気のせいだったかな。あ、そういえば飛竜ワイバーンはどこぞの誰かが、穴に落っことしたんだっけかな、せっかくの報酬がパァだな」

「そうだったわね。あのワイバーンけっこう大型だったから、いい報酬がでそうだったのにね」




 言いたいだけ言えばいい。いえばいうだけ、そっちが恥をかくことになるんだから。僕はアスターをちらりと見た。アスターは僕らが集まると大抵誰かに話をさせて、事の成り行きを見た後、核心をついた話を持ち出す。おそらく、もうじき口を開く。


 案の定、モートンとシラがひとしきり僕に嫌味を言った後で、アスターは小さくため息をついて口を開く。




「モートン、シラ。今回の報酬は当初の予定通り、魔物三匹分だ。カリヨンドラゴンとオオトカゲとワイバーン」




 その言葉にモートンとシラは同時に、え、と間が抜けた顔をみせた。モートンが不思議そうにアスターに話しかける。




「どういうことだ? ワイバーンはネイルがどっかの穴に落としてきたって言ってたじゃねぇか。まさかネイルが一人でワイバーンの討伐をこなしたってのか?」




 アスターは固くうなずいた。




「そうだ。方法はどうあれ、ネイルはワイバーン一匹をあの討伐の次の日にこのギルドにもってきていたようだ。だから、お前たちもくだらない文句ばかり言っていないで、ネイルの仕事ぶりに感謝するんだ」




 アスターはそのまま、僕たちを見渡して質問をしてきた。




「お前たち、今回の魔物討伐作戦の依頼主が誰なのかを知っているか?」




 シラとモートンはお互いの目を見て、くびをかしげた。誰も答えないアスターの質問はテーブルの真ん中に転がった。しばらくして、それを僕がひろった。僕は小さく答える。




「……今回の討伐作戦の依頼主は、ベルク竜具商人団だ」




 僕の返答に満足したようにアスターはうなずいた。そして続ける。




「そうだ、それがどういう意味か分かるか?」




 アスターは僕の目を見ていった。今度は皆に対する質問じゃなくて、僕に対する問いかけだ。僕は少し緊張しながら、おそらくアスターの言わんとしていることをくみ取って話す。




「うん。ベルク竜具商人団はおもに竜素材から作る武具をあつかう。てことは、今回討伐した竜たちの牙や骨、鱗を必要としているはず」




 僕の言葉を聞いた後、アスターはまずシラに強い目を向けた。




「ネイルの言うとおりだ。シラ。俺は、前から何度もお前に言っているはずだ。お前の扱う炎の魔法は高火力だがその分、使いどころを考えなくてはいけない。鱗や皮膚が高く売れる魔物の場合はもう少し攻撃する部位を考えろ」



 アスターは、次にモートンにぎろりと視線を移し続ける。




「それに、モートン。お前はこの前の討伐の時、ワイバーンの右翼に攻撃を集中させていた。空中へ逃げるのを防ぐためというのはわかるが、いささかやりすぎていたような気がした。まさかとは思うが、わざとじゃないよな」



 モートンとシラはお互いの顔をちらりと見合わせて、気まずそうに口をつぐんだ。アスターは鋭いまなざしを光らせると、うつむいた二人を交互に睨みつけ言い放った。




「いいかお前たち。仕事の質というのは、細かい部分にあらわれる。あんまりにも間抜けなことをやっているとギルドからの信頼を失う。俺たちはこの町の冒険者ギルド唯一のAランクパーティなんだぞ。ただ魔物を狩っているだけじゃ駄目だ。狩り方にまで気を配らければならない。わかったな」




 その後、僕たちは報酬をそれぞれ銀貨で受け取り、その日は別れた。




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