「汚物は消毒ですわ!」 〜悪役令嬢アリーナは今日もダメ王子を撃ち抜く〜
「汚物は消毒ですわぁーーーー!!」
「ぎゃああああああああ!」
ごきげんよう。
ワタクシはアリーナと申しますの。
ただいま、婚約者のカルスタン国王子、ダミアンのお仕置き中なので少しお待ちくださいませ。
火炎放射器型浄化魔法装置をぶっ放してダミアンの煩悩を吹き飛ばします。
このアホ王子は頭と股がゆるゆるで、かわいい子を見つけると見境なく口説きにいくのです。
王妃様もいつも嘆いておられます。
王は先立ち、王家を継げる子はダメアン……もといダミアン一人だけ。
つまり。
このアホを調教して、真っ当な王にするしか道はないのです。
ダミアンにしつこく絡まれていたメイドが、泣きながら逃げていきました。
今日も一人、哀れな子羊を救うことができた。
ワタクシ、有能ですわね。
煩悩が浄化されたダミアンは腰を抜かしたままワタクシを見上げます。
「アリーナ! もっと穏便に事を運べないのか!」
「何をおっしゃいます。立てば弾幕、座れば爆弾、歩く姿は殺戮兵器と言われるこのワタクシですわよ!」
わめきながらもまた新入りメイドに目を奪われるアホにショットガン型魔法弾を打ち込みます。
被弾から十秒間、痺れて動けなくなる効果があります。
「いちいち痺れ玉を撃つな!」
きっかり十秒経って怒鳴るダメアン。
「だから種馬なんて呼ばれるんですわよ、ダメアン様! 次やったらちょん切りますわよ!」
「誰がダメアンだ。俺は、ダミアンだ!! そしてナニを切るつもりだ!?」
「脳みそ空っぽの色ボケを種馬ダメアンと呼ばずなんと呼ぶのですか。去勢すれば少しはまともになるのではありませんこと?」
「玉を取ったら世継ぎが産まれないだろ!!」
「それもそうですわね。失念しておりましたわ」
他の令嬢たちはこんなアホを夫にしたくないと婚約を断り、男爵令嬢という貴族の中でも最下位のワタクシにお鉢がまわってきてしまったのです。
見た目は一流中身は五流の男なんてワタクシも御免被りたいですが、ワタクシが断るともうダメアンと結婚する娘は庶民から探すしかなくなります。
そんなのはかわいそう。
だからワタクシ、人身御供としてダメアンの婚約者となりました。
百八発も撃てばダメアンの煩悩もきれいサッパリなくなり、もしかしたら見た目と同じくらいまともな王子になれるかもしれませんからね。
それに、愛のない結婚は貴族によくある話。
ワタクシ、ダメアンのことは愛していませんがこの国のことは愛しているので、大抵のことは我慢します。
だから今日もワタクシはダメアンの汚物を消毒していくのです。
そして三年。
ワタクシことアリーナは、駄目王をしばく必要悪王妃として世界に名を馳せることになるのでした。
生まれてきた娘も成長し、十年も経つ頃には父の煩悩をぶっ飛ばす才に恵まれてくれたので国は滞りなく運営することができています。
「オゲレツな脳みそを粛清しますわ!」
今日もカルスタン王城に銃声が響く。
END
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