五大召喚術師の大冒険
※これは連載用小説の第1話をそのまま短編にしたものです!
五大召喚術師について
『キーンコーンカーンコーン……キーンコーン、カーンコーン』
ここはとある中学の教室だ。
大学の教室のように階段状になった机が不揃いの大きさで並んでいる。そこに座るのは様々な種族の少年少女達。
「おーい席に着けよ!授業を始めるからな。」
そしてすべての生徒の注目が集まる教卓にいるのが光の髪を持つ以外は他の人間と同じ姿の精霊人の男性教師だった。
「えーと……今日はどこからだったけな?」
『せんせー五大召喚術師だってば!しっかりしてよ!』
そんな女子生徒の言葉と皆の笑い声で騒がしくなるが、注意はせずにそのまま授業を進めていく。
「そうだったな……じゃあ基本からおさらいしていくぞ。
まず大前提として五大召喚術師とはなんだ?んーじゃあ来司葉答えてくれ。」
「えー俺かよ……五大召喚術師とは召喚術師の代表的なスキル持ちのことで
・カード系のスキルを持つ『カードマスター』
・ガチャ系のスキルを持つ『ガチャマスター』
・サモナー系のスキルを持つ『マスターサモナー』
・シャーマン系のスキルを持つ『マスターシャーマン』
・変身系のスキルを持つ『マスタートランスフォーマー』
それぞれの最上位の位【マスター】を目指すために日夜腕を磨いている人達の事です。」
「その通りだ。じゃあ次にサモナー系とシャーマン系の違いを説明してくれ……酒池。」
「はい。サモナー系は召喚術師の基本となるスキルであり主に魔物などの生物を使役してメダル形の依り代の中に宿らせることで使役します。比較的発現しやすいスキルであり五大召喚術師のなかでは最も系統スキルの数が多いスキルです。私達の生活の中でもよく見かけるぐらい当たり前の存在です。
一方シャーマン系はよくサモナー系と混同されますがサモナー系が生身の肉体を持つ生物を使役して戦闘させたり出来るのに対して、シャーマン系は霊を召喚または降霊させて占いや言葉をかけたりは出来るが戦闘には参加することが出来ないと言う違いがあります。」
「そうだな。よく町中でも従魔を連れている人を見かけるよな。逆にシャーマンはあんまり見かけないけど占いに行ったら大体いるよな。
このように五大召喚術師といっても非戦闘系の召喚師も沢山いる。
非戦闘系いえばもう一種ガチャ系の召喚術師も大半は非戦闘系だな。商人や職人として活躍している召喚師も沢山いる。
じゃあ逆に戦闘系の召喚師を浜乃答えてくれ。その特性も一緒にな。」
「はい。五大召喚術師のなかで戦闘に向いている系統は3つあり、そのなかでも召喚師が自分で戦闘をするトランスフォーマー系が一番だと思います。次いでサモナー系とカード系です。
トランスフォーマー系は特定の武具やアイテムを身に付けそのアイテムが宿した願いを元に召喚し自らが戦闘を行うものです。
サモナー系では仲間にした魔物に命令をして攻撃します。
ですが仲間に出来る魔物の強さは自らの強さに比例します。なので自らが弱ければ弱い魔物しか仲間に出来ません。
カード系ではカードを使い魔物を召喚しますがカードのレア度などによって強さが違い簡単に成長もしないため運がなければそれほど強くありません。
……五大召喚術師すべてに共通することですが召喚をするためには自らの強さが必要なことが多々あります。新たな仲間やスキルを使用するためのアイテムを集めるためにダンジョンに潜る必要があるためです。」
「その通りだ。それを含めて今日は五大召喚術師の仕事について話していくぞ。
お前達ももう中学三年になって半年がたった。残り僅かの学校生活で卒業して成人になった後どうするか考えてる人も多いだろう。
高校に進学するか、就職をするか、冒険者になるか、スキルを生かして何かするか。どうするかはお前達次第だ。
これからこのクラスは主に冒険者になる為にこの防壁に囲まれた壁の外へ行くために必要なことを教えていく。
まず召喚師とは現在最も人気の職業だが、特に人気なのがカードから現れる様々なものを駆使して戦いを繰り広げるスポーツ化しているデュエリストについてだな。
『デュエリスト』それは花形職業の一つでカード系のスキルを持つ人なら誰でもなれる職業だ。
デュエリストはそれぞれ自分が得意とする系統がある。
一部を紹介すると…………
・環境系のカードを軸にそれを支える魔物と魔法やアイテムカードを使う『環境型』
・攻撃力の高い魔物で主に構成されている『攻撃特化型』
・守りの高い魔物で主に構成されている『防御特化型』
・素早さの高い魔物で主に構成されている『俊敏特化型』
や、ほかに『植物』『機械』『竜』『火属性』などの特定の系統のみのカードで構成されているデッキを使うデュエリストもいる。
更に最も基礎的な事だがデュエリストに必要なものは【カード】系統のスキルと魔力とカードだ。
カードには二種類あってスキルが必要なものと必要無いものだ。
スキルが必要無いものは主に食料の保管用として使われているな。これは主にカード系のスキルで作ったもので使用期限がある。後はダンジョンから出るカードの一部も使えるが。
そしてスキルが必要なものはモンスターのカード等強力なものが多い。
ではどうやってカードを手に入れるかだが方法は4種類ある。
1.ダンジョンの魔物のドロップか宝箱から手に入れる。
2.ガチャ系スキルやガチャ系アイテムから手に入れる。
3.クエストの報酬として手に入れる。
4.カード系スキルを用いてカード化する。
1はカード系スキルを持っている者が倒すとドロップする確率が高くなる。
2はそのままだな。運が必要だが高価なカードや強力なものが手に入ることもある。
3はたまにクエストというものが発行される時がある。
有名なものだと神の依頼があるな。他にも個人からのクエストや魔物からのクエストもある。
一番身近なのだと神社での奉納クエストだな。
4はスキル持ちが魔物等をカード化したりだな。これは魔物などの知的生命体においては両者の同意が必要になる。
またスキルで空のカードを作ることが出来る。
また不定期だが神社でイベントをやっていてそこで運試しでカードを手に入れることも出来る。
すべてのカードは魔力を込めて具現化するために魔力が必須だ。そしてカードによって具現化召喚に必要な魔力は違い10で召喚出来るカードと1000で具現化出来るカードがあったりする。
その為大会なんかでは規定魔力量のなかでどのようにデッキを構築するかが見所となっているな。
最後に絶対に忘れてはならないことだがカード系に限らずすべての召喚術では信頼関係がとても重要になる。酷い扱いをしていると契約が強制解除となり術者に襲い掛かる事もあるから絶対に酷い扱いをしないことだ。
これで今日の授業は終わりにするが一週間後迄に各自でカード系召喚術師かデュエリストについて纏めたレポートを提出すること。そして次はシャーマン系とトランスフォーマー系の召喚術師について授業をするから予習としノートて三ページ分書いてくること。」
『礼!』
一人の生徒の合図で全員が礼をした後すぐにガヤガヤと騒がしくなる教室。帰り支度を始める生徒もいてどうやら今日の授業はこれで終わりのようだ。すると五人の生徒が挨拶しながら教室を後にしたどうやら五人で帰るようだ。
「おい、今日はどこに行く?」
一人の少年が歩道を歩きながら隣に声をかけた。
それに答えたのは隣にいた少女だった。
「今日は私が皆に伝えたいことがあるからこのまま私の家に行ってもいい?」
すると残りの三人はそれぞれにこうていの返事をした。
「りょうかーい」
「りょ」
「OK~!」
歩くこと三十分俺達はとある神社の一室にいた。
ここで簡単に俺達を紹介しておこう。
「んじゃ毎週恒例のステータスタイムと洒落込もうじゃないカ!まずは俺からだな。」
そう言ってステータスカードを可視化して皆に見えるように公開したのは俺こと、森鏡 隼聖金髪の緩いパーマがかかったマッシュショートな髪型に
深い闇のような漆黒の瞳と肩甲骨から生えている梟の翼と平均的な身長の中の上の顔だ。
《ステータス》
[名前]森鏡 隼聖
[年齢]15
[性別]男
[種族]金梟の獣人
[レベル]3
[ユニークスキル]【幸運】
[スキル]【無音飛行】(種)【獣化】(種)【サモン】【テイム】
[称号]【中学三年生】
「またかよ……じゃあ次は僕の番だな」
こいつは朱色の髪を後ろで纏めたマンバンヘアーにして深緑の瞳と左右の耳の後ろから上に向かって金属のアンテナが生えている大柄な体格の上の下の顔の少年だ。
《ステータス》
[名前]深南雲霞牙 蓮翔
[年齢]15
[性別]男
[種族]レーダーの機械人
[レベル]5
[ユニークスキル]【変身】
[スキル]【広域探知】(種)【アタッチメント】(種)【格闘術】【無魔法】
[称号]
「毎週見ても変わってるところなんて無いだろ。」
ぶつくさ言いながらステータスを出したのは水色の髪を短く切り揃えて紫の瞳をしているやんちゃ系のイケメンだ。顔は上の中
《ステータス》
[名前]瀬世羅祇 優将
[年齢]15
[性別]男
[種族]普人
[レベル]3
[ユニークスキル]【カード使い】
[スキル]【体力】(種)【水魔法】(種)【鑑定】【空間付与】
[称号]
「まあいいだろ!これが出来るのも後少しなんだからよ」
この少し男っぽい口調をしているのは歴とした女だ。ボーイッシュなかっこいい系の整った顔をしていて黄緑の髪をマニッシュショートにして深緑の瞳をしている。カッコいい系女子。
《ステータス》
[名前]花萌葱 美穂音
[年齢]15
[性別]女
[種族]リーフエルフ
[レベル]3
[ユニークスキル]【ランダムガチャ】
[スキル]【草魔法】(種)【精霊魔法】(種)【調薬】【裁縫】
[称号]【ギャンブラー】
「………………」
最後に何か思い詰めた表情をしているのが正統派な日本美人で黒の艶のある長髪に一房だけ桜の枝と花がついている。
丸い卵形の顔に少したれ目がちな黒の瞳を持った左右対称な顔立ち。美しい顔の超美人。
《ステータス》
[名前]襷 亜里奈
[年齢]15
[性別]女
[種族]桜の樹人
[レベル]4
[ユニークスキル]【巫女】
[スキル]【優美な桜】(種)【桜の香り】(種)【木工】【霊眼】
[称号]
「おい美穂どう言うことだよ?」
「なに言ってんだよ優将。進路のことだろ?あたし達もそれぞれ進路を決める時期が来てるんだから。
まぁ?あたしは冒険者になってばんばんガチャを回すけどねー
あんたらはどうすんだい?」
その問いに男子三人は顔を見合わして頷くと代表して優将が
「そりゃ勿論俺達三人も冒険者になるに決まってるだろ?」
「だろうな。……亜里奈あんたはどうすんだい。」
「私も皆と一緒に────」
亜里奈が答えようとしたその時、優将が遮るように話し出した
「亜里奈は勿論進学だろ?巫女っていう希少なスキルを持っているんだから国の上層部が欲しがるだろうし、都会に行って活躍した方が絶対いいって」
「ッ!…………。」
何て事無いように言う優将の言葉で場が凍った。
「……なんでそう思うの?」
震える声を抑えながらゆっくりと吐き出すように問いかける亜里奈。
「シャーマン系のしかも神を呼び出せるスキルは全体の1%しかない超希少スキルだ。それに亜里奈は美人だし礼儀作法もしっかりしてるし成績だっていい。俺達とは違って国が求めてる期待に答えられる人間なんだ。」
「そっか…………。ごめんね皆、まだお茶も出してなかったね。今淹れてくるからちょっと待ってて。」
そう言って俯きながら部屋を出ていった。
「ちょっと!亜里奈!」
………………
「蓮翔!悪いけど亜里奈の所に行ってくれない。」
「別にいいけど美穂はどうするんだ?」
「あたしはちょっとこのバカと話があるの。」
「分かったよ。……行ってもなにも出来ないけどいいよね。」
「ええ。」
そして蓮翔が追いかけて部屋を出ていった。
残ったのは優将と美穂と俺の三人だけだった。っていうか俺の影薄くない?
「で。あんたどういうつもりなの?
亜里奈があたし達と一緒に冒険者になるのが夢だって知っててさっきのバカな発言を言ったんでしょ。」
「勿論だ。…………三年前のあの日この五人で初めて冒険者ギルドに登録したあの日にした約束はずっと覚えているよ。」
そうだったな。俺達全員が12歳になった次の年の4月1
日皆で冒険者ギルドに行って登録をしたんだよな。
確かあの時はギルドタワーのバルコニーで優将が内壁を見ながら
『いつかこの五人であの壁の外に出て滅茶苦茶凄い大冒険をしようぜ!』
って言ってその後に皆が目標を順番に言ったんだよな……
『俺は世界一のカードマスターになる!』
『俺はすべての魔物と動物がいる牧場を作る!』
『僕は仲間を……大切な仲間を守れるヒーローになる!』
『あたしはバンバンガチャを回し続ける!』
『私は…神様に恥じない力をつける!』
そして皆でお揃いで買った小さな魔石が着いたキーホルダーを重ねて誓ったんだよな
『俺達は絶対に五人で外の世界で大冒険をするぞ!』
てな。あの時のキーホルダーは太陽の光を浴びて輝いていたな。……まるで俺達の心そのままだった。
「なあ隼聖。お前は今もあの時の夢を持ち続けているか?」
それは…………
「それは……。わからない。でも、魔物や動物に襲われる危険がなく触れ合える場所を作るって夢は俺の心の芯の部分にずっとあるよ。」
「そうか…………」
そう一言呟いて優将は美穂の方を見てスッと顔を反らした。
「あんた何であたしの顔を見て見なかったことにしたんだい!?」
「お前は聞かなくても分かるからな。ガチャに取り憑かれたギャンブラーだろ」
「そうさ!あたしはガチャを回すことが生き甲斐でガチャを回さないあたしはあたしじゃないよ!」
そんな美穂と俺の方を見てどこか羨ましそうな眩しそうに目を細めた優将は辛そうに言葉を吐き出した。
「俺はさ……あの時の夢を叶えることを諦めたんだよ。知ったんだ。上には上がいる……上にいるやつは努力をしている。現実を知ったんだよ…………。無理なんだよ今努力していない俺が世界一のカードマスターになるなんて。」
ポツリ…ポツリと話すその声はとても苦しそうに辛そうだった。
「だからどうした?お前が諦めたから亜里奈も冒険者になるのは諦めてやりたくもない国のために働けって言うのか。」
そんな優将に厳しい声をかけたのはやっぱり美穂だった。
「あんたと一緒にするな!あんたが考えてることは分かるよ。大方ビビったんだろ?自分が現実を知ったときに亜里奈に国の機関が運営する高等学校の推薦が来ていることを。そして一人のために貴重な転移使いを呼ぶ準備が出来ていることを。」
「何で知ってるんだよ」
「あたしだけじゃないよ。隼聖も蓮翔も知ってるよ。
でもあたし達は亜里奈を信じてるから。あの子が努力しているのを知っているから。あの時の約束を覚えているから……どんなことがあろうとも一緒に冒険者になるつもりだよ。
ねえ隼聖。」
「ああ。俺達は五人で一人だろ?どんなに辛くても苦しくても……一人じゃ出来ないことも五人で力を合わせたら出来る。それは俺達が証明してるだろ?」
「美穂、隼聖……。」
「まどろっこしいねえ!じゃあ本人から直接言ってもらおうじゃないの!」
そう言いながら歩いて部屋の入り口の襖に行くと勢いよく横に引いてその前に立っていた亜里奈をグン!と引っ張って優将の前まで連れていった。
突然のことに理解が追い付いてない二人を残して俺達は部屋を出ていきそのまま……………………隣の部屋の襖越しに聞き耳をたて始めた。
『…………っと、その……聞いてたのか?』
『うん。』
『そうか……』
「あーもうなんだよこれは人見知り同士の会話か何かかい?!」
「ちょっと美穂静かにしろよ!バレるだろ!」
「だからこうして小声で怒鳴っているんだろ!」
「二人とも器用だよな」
『………………』
『………………』
『全くあいつらは何をしたいんだか。』
『ねえいくら小声でも襖一枚隔てただけだったら丸聞こえなのにね。』
「ねえ優将。話があるの聞いてくれない?」
「…………なんだ」
「私ね好きな人がいるの。その人はすっごく頑張っているけどなかなか結果に繋がらなくて何でも一人で抱え込んで。そのくせ周りで困っている人がいたら自分がやっていることをほっぽって助けに行く。私がいつも助けたいなって思っていてでも助けることが出来ないすっごく不器用で優しい努力家の人なの。」
「そんなやつがいるのか。いいんじゃないか?俺と違って───」
「その人の名前は瀬世羅祇 優将。紫の目で優しく笑うところが凄く素敵で大好きな私の初恋の……大好きな人。」
「私は優将のことが大好きなの。私にとっての一番の幸せは優将と一緒にいること。都会の学校に行くことでも国のために働くことでもないの。優将が辛い時は横にいて一緒に悩んで、優将が嬉しい時は隣で一緒に喜んで、優将が悲しい時は一緒に泣いて、優真が楽しいときは隣で一緒に笑ってあげる。だから私と付き合って下さい。」
「………………はぁ。だっせぇな~俺は。こんなことをお前に言わせるんだからな。
勿論です。こんな俺でも良ければ一緒に冒険者になって世界一の景色を見に行きましょう。」
こうして二人は結ばれてはじめの一歩を共に歩き出しました。
めでたしめでたし。
じゃねえよ。俺達の事絶対忘れてるよな?どうすんだこれ滅茶苦茶入りにくいぞ。
そして部屋の中では初々しいカップルがその隣の部屋にはお邪魔虫な野次馬が三匹入ることが出来ずにいるのでした。
感想御待ちしています。