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前篇 「次の世代へ」

この作品は『ライト・ブリンガー1〜蒼光〜』シリーズの後日談にあたる作品です。ネタバレ要素も含みますのでご注意下さい。

 前篇 『次の世代へ』


 世界は、変わって行く。

 それを望んだのは、誰でもない、自分自身だった。

 別に世界平和を望んだわけではないけれど。

 ただ、自分に心地の良い場所を創り出したかった。

 今まで心地良かった場所は、少し崩れてしまったから。新しく、自分が思い描く居場所を創ることに決めた。信頼できる仲間たちと共に。

「随分変わったなぁ」

 白い病室の窓から青空を見上げて、ひかるは呟いた。

 大きな塔のようにそびえ立つ建物を見つめて、光は目を細める。

 あの場所は、光がかつて仲間と共に戦った場所だ。突然巻き込まれた戦いの決着をつけるため、そして光自身がその先の未来を手にするために戦った場所だ。

 そして、同時に今、光がいる場所でもある。

「あれから二年半、ね」

 光の脇にあるベッドには一人の女性がいた。蜂蜜のような美しい金髪と、澄んだ碧い瞳の女性が。彼女のお腹は大きく膨れ、妊娠しているのが判る。それも、あと数週間で出産予定日を迎える。

「名前、考えた?」

 優しく微笑んで、女性が問いかけてくる。

「考えたよ、セルファ」

 光は自分の恋人へ視線を向けて、笑みを返した。

 あの戦いの後、光は全ての能力者へ向けて宣言を行った。VANという組織の長を倒したこと、能力者であろうとなかろうと、光に戦う意思はないこと。

 光が生きる場所は、故郷には無くなっていた。

 日本政府は静観を決め込み、議論は交わされるものの結論を先送りにした。国連でも議論は白熱していたが、結局意見がまとまらずに時間が過ぎていく。世界全体の判断や結論が出ないまま、能力者たちはその存在を明かされ、生きることになった。

 光もまた、戦いを終わらせた者として有名になり、帰り着いた祖国で浮いた存在となっていた。途中で辞めてしまった高校に改めて行くことも、ましてや就職も難しい。光は戦争を終わらせた英雄であると同時に、世界で最も危険な人間と認識された。

優輝ゆうき

 彼女のお腹に手を当て、そっと撫でながら、光は呟いた。

 色々なしがらみや意識の差が煩わしくて仕方がなかった。恐れる気持ちも確かに解る。それでも、ただ平穏に暮らせれば光は二度と力を使うこともないだろうと思っていた。戦いに特化し過ぎている光の力は、日常生活ではあまり役に立たない。命を狙われでもしない限り、使う必要性や有用性など、無いに等しいものだったのだから。

 それでも周りは光を放ってはおかない。

 だから、光は決めた。

 新しい居場所を創る、と。

「優しい輝き、で優輝」

 生まれてくる子供が男なら光が、女ならセルファが名前を付けようと二人で決めていた。セルファの妊娠が判ってから、二人で色々考えた。

 今、光とセルファは結婚して夫婦となっている。だが、別姓だ。それをどちらかに統一するか否か、名前はどちらに準拠すべきか。光もセルファも、自分の苗字には思い入れがある。同時に、別に統一する必要性も感じなかった。だから夫婦別姓のまま、光はセルファと共に過ごしてきた。

 子供が生まれることが判って、どうしようか改めて考えたが、結論は出なかった。だから、男なら光の、女ならセルファの姓で名前を決めることにした。

「安直だと思われるかもしれないけど、どうかな?」

 戦いが終わりを告げ、その年が変わる前に、光は全世界へ向けて宣言した。

 能力者であろうがなかろうが、気にしない国を創る、と。当たり前のように誰もが暮らせる場所を創る、と。かつてVANの本部があった建物を中心に、国を興す、と。

 日本語と英語を公用語として、能力者にはその力に対するルールを設け、平穏に暮らすための術を考え続けた。誰もが互いに認めあえる場所を創ろうとしている。

 まだ、完成はしていない。それでも、少しずつ進んでいる。国連や各国から警戒されてはいるが、光という英雄の顔を立てているのか、表立った反対はない。

「良い名前だと思うわ」

 セルファが微笑む。

 今まで、家族に守られて暮らしてきた光にとって、国を興したり、その代表として立ち振る舞うことは不安だらけだ。それでもセルファが、仲間が支えてくれる。光は自分が思うことを述べ、自分が望む理想を語り、その実現のために動き続けている。

「そろそろ、行くよ」

 言って、光は立ち上がった。

 まだこの国はできたばかりだ。決めなければならないことも、考えなければならないこともまだ多い。それを決定する場に、この国の中心人物である光はいなければならなかった。

「行ってらっしゃい、ヒカル」

 微笑むセルファに笑みを返して、光は病室を後にした。


 国の代表としての仕事を終え、光は会議室の中央で大きく息を吐いた。

 能力者に対するルールや、それを破った者に対する処罰内容の修正が今日の主な案件だった。

「そう言えば、そろそろだったな」

 会議室に残った数少ない人物の一人が光を見て呟いた。

 切れ長の双眸を持つ、片腕の男、じんだ。かつての戦争で共に戦った仲間であり、今でもこの国を支える中心人物の一人だ。

「予定日は明日だっけ?」

 隣に座っていた男、親友のしゅうが光を見る。

「予定では、な」

 光は苦笑した。

 出産予定日は明日ということになっているが、予定は予定でしかない。もしかしたら今日になるかもしれないし、明後日以降になる可能性だってある。

「ふふ、やっぱり心配?」

 刃の隣に座っていた彼の妻、かえでが笑う。

「まぁ、それもあるけど……」

 光は苦笑する。

 仲間たちの出産には何度か立ち会った。あの時、共に戦った仲間の中では光が一番出遅れた形になっている。そういう意味ではむしろ若干安心しているところもある。

「ん、じゃあ何かあるのか?」

 刃の向かいに座っていたしょうが首を傾げた。

「俺が求めた未来は、こんな世界だったかな……って、ふと思ってさ」

 光はどこか遠くを見つめるように呟いた。

 子供の頃は、未来なんて遠いずっと先のことだった。考えても、思いつくのは何のリスクも見ていない希望だけ。ただの理想像だけだった。少しずつ、大きくなるにつれて現実的に未来のことを考えるようになった。けれど、小さかった頃よりも将来が見えなくなって行ったような気もする。色々なことが解って来るからこそ、自分がどうなるか想像できなかった。

 光が力に目覚める前に思っていた未来と、今の世界はきっとかなり掛け離れたもののはずだ。戦うことも、命の遣り取りもなかったあの日常のままだったら、光はこの場所にはいない。

「確かに、私たちが思ってた通りにはなってないわね」

 翔の隣に座る彼の妻、瑞希みずきが苦笑する。

 今の自分たちが、そのまま続いていくのだと思っていた時期もある。だが、それは違うのだとかつての戦いで光は知った。それが過去からの延長線であっても、未来は今と同じ形にはならないのだと。

 光は最初、ただ自分が好きなように生きて行けたら良いと思っていた。好きなことをして、友人と遊んで、働かなければならないとしても、自分がしたいことはできるような毎日を送って行くのだろうと思っていた。そうなる前に立ちはだかる試験や試練、挫折なんて考えていなかった。

 だが、光は能力者となって、その身をもって生きることの苦難を知った。生きるために鍛え、何をしなければならないのかを考える。自分が思い描いた通りに生きて行くためには、何が必要なのかを。

「刃は、どうだ?」

 光はそう問いを投げた。

「そうだな……少なくとも、戦い始めた頃よりも今は幸せだろうな」

 復讐のために戦ってきた刃にとって、自分の未来のことは眼中になかったのだ。VANという組織を潰し、復讐を果たすことだけを考えていた。どうすれば敵を倒せるのか、もっと強くなれるのか、VANを潰すことができるのか。ただそれだけに目を向けて自分自身と向き合うことは後回しにしていたと、彼自身も戦いが終わってから言っていた。

 戦いが終わり、光が平穏に暮らせる場所を創りたいと相談に行った時、刃は賛同してくれた。自分たちが生きていくには、世界は急激に変わり過ぎていたから。全ての人が能力者を受け入れるには、まだ時間がかかる。そんな中でまともに生きていけるかどうかなど、判るはずもない。

 有力な能力者として名が知られてしまった光や刃たちがこれからの世界を平穏に生きるためには、国という、自分たちが住むための枠を創るしかなかった。

 それ以上に良いと思える他の方法は、光には思い付かなかった。刃に相談を持ちかけたのも、自分の選択に完全な自信がなかったからだ。それに、自分一人でできることでもないと思っていた。例え光がVANの長を倒した能力者であったとしても、それだけで国が興せるとは思えない。

 それまで敵対していた光が、VANの長に成り代わって国を建てられるとは思えなかった。光のことを快く思っていない能力者もいただろう。

 だからこそ、光は自分の考えを世界に対して述べた。光が本当に望んだものや、VANとの戦いで経験したすべて、自分の思いを、包み隠さずに。

「ま、途方に暮れてたところはあったからな」

 翔が言った。

 結局、あの戦いで有名になり過ぎた能力者たちは今まで通りの生活が難しい状況だった。周りの視線だけでなく、世界的に注目されてしまったから。危険な存在として動向が注目されていた。

 そんな中で戦う前と同じ生活には戻れない。光たち自身が望んでも、周りがそれを許さない。

 途方に暮れていたのは光も同じだった。

「……俺の子供が物心つく頃には、刃に預けるよ」

 まだ先の話ではあるが光は言わずにはいられなかった。

 刃は国の首脳として活動しながら、自分が学び、鍛えて発展させてきた武術を伝える道場を開いている。かつての戦いを生き延びる際に培われた技術や鍛練法を教えているのだ。戦争を終わらせる中核となった能力者の武術というだけで、入門者は少なくなくない。

 それに、能力者としての力の使い方や正しい価値観、精神を教える場にもなっている。

「その時は俺が直に面倒を見てやるさ」

 刃は微かに笑みを浮かべて答えた。

 片腕ではあるが、刃の実力は失われてはいない。さすがに、あの戦争を最前線で戦い抜いた頃と比べれば多少、戦闘能力は低下しているかもしれない。だが、腕は落ちていない。今も続けている鍛練で、磨きがかかっている部分もあるだろう。

「無茶はさせないでくれよ?」

「解っているさ」

 苦笑する光に、刃が肩を竦める。

 望む世界を創り出すために、中枢となる存在には光が最も適している。そう言ったのは修だ。

 今でも、英雄と呼ばれることを快く思ってはいない。だが、光は甘んじて受け入れた。周りが英雄だと言うことを受け入れる代わりに、光は国を建てたのだから。光が英雄であることを認めなければ、国を興すという行動は実を結んではいない。

 一方的な能力者至上主義を掲げて力を持たぬ人間全てに宣戦布告したVANの長を打ち倒し、世界の崩壊を防いだ英雄『ライト・ブリンガー』が今の光だ。

 光がどう思おうと、周りは光をただの人間としては見てはくれないだろう。隠すことができないのなら、隠さなくても暮らせる場所を創るしかない。そう思ったから、光は英雄として国を興すことを決めた。

「……次の世代に、戦いだけは残したくないな……」

 光は小さく息を吐いた。

 まだ世界は混乱から完全に抜け出せていない。能力者という存在はまだこの世界には異物だ。戦争が終わる前よりはかなり安定してきたと言えるが、それでもまだ小競り合いは起きている。能力者による犯罪やテロ、非能力者による迫害や差別が表面化して社会問題になっている。

 能力者たちが水面下で動いていた頃には表面化していなかった問題が、戦争という形で能力者の存在が公に知られてしまったことで前面に出てきてしまったのだ。

「……そうね」

 楓が目を伏せる。

 光は能力者の代表として、そういった事態に対処する責任がある。世界最強の能力者であり、英雄である光に課せられたものは、能力者たちの統率と制御だった。

 だが、光自身が力を使って解決するという方法は取れなかった。光が力を使い、戦うということは、能力者すべてが戦う意思を見せることと同義となってしまう。光たち自身がそういった問題に対して直接介入することはできない。

 故に、光たちは考えた。あらゆるものを受け入れる国として、ルールに対してやや過剰とも思える罰則を課しているのも、この国に住む者たちの意識を高める意味合いがある。だが、ルールはそこまで厳しいものではない。いわゆる犯罪や、常識的な枠組みばかりで、普通に暮らす分にはかなり自由な法律が組まれている。

 そして、全世界で発生する能力者に関わる問題に対しては、国から各地へ厳選された能力者を派遣することになっていた。光たち国の首脳陣全員が認めた能力者を、問題解決の協力者として派遣している。軍や警察機構などに派遣し、その組織と協力して問題の解決に当たる。テロの鎮圧や罪を犯した能力者の身柄の確保など、力を持たぬ者に難しい役割を担当するのだ。

 そのために、能力者としてのランク付けも行うようになった。基本的には力の大きさがランクの基準だが、各地へ派遣されるレベルのランクを得るためには、力だけでなく人格も考慮される。

 能力者たちの存在が公となり、起きている今の問題も、よくよく考えればさほど重大なものではない。力を持たぬ者がテロや犯罪をしているのと変わりはないのだ。力を持っているから、力を持たぬ者には対処が難しいというだけで。

「……子供たちの世代が戦わなくてもいいようにしてやりたいな」

 自分の右手を見つめ、光は呟いた。

 戦って失ったものは多過ぎる。

 それまで当たり前だった生活、価値観、大勢の命、世界の平穏。沢山のものと引き換えにして掴み取った未来いまは、戦っていたあの頃に欲しかったものと同じだろうか。

 血まみれの両手と過去を消すことはできない。英雄と呼ばれることを嫌がったのも、そう呼ばれることで自分が殺めてきた命を切り捨ててしまっているように思えたからだった。それだけ多くの能力者を殺してきたのだ。今まで奪ってきた命たちが目指していた未来よりも、光は良いと思える未来を掴まなければならない。

 せめて、これから生きて行く命には殺し合いというものを知らずに生きて欲しい。

 光のような辛い思いはして欲しくない。

「だが、難しいな、それも……」

 刃が小さな声で息を吐いた。

 解っている。

 世界はそう簡単に変わるものではない。能力者という存在が公になってからが早過ぎたのだ。VANは世界に考える暇を与えるつもりはなかったのだろう。急激に世界を変革させ、VANの理想である能力者たちの国家をねじ込むつもりだったのだ。周りが大きく動き出すよりも早く、結果を出すつもりでいた。

 VANを叩いたことで、光は英雄であると同時に世界の敵にもなりうる存在となった。光自身が気にしなくとも、周りが光を放ってはおけない。

 当然、光や刃のような戦争で活躍した者たちの動向は注目されている。光の子が生まれることも、その存在そのものに対しても、多くの人や国が注意を払っているはずだ。

「大人って、面倒だよな」

 光は苦笑いを浮かべた。

 放っておいてくれればいいのに、と何度も思った。だが、その度に光は思い出す。例え本人にその気がなくとも、強大な力を持つ者は周りの多くの者から恐れられる。だからこそ、光もあの戦いの中にいたのだ。VANの長が、光を危険視していたからこそ、光は自分自身や周りの大切なもの、未来を求めて戦っていたのだから。

 人が本当に理解し合えたらどんなに楽だろうか。

「それでも、俺らもずっと子供のままじゃいられないからな」

 修も肩を竦める。

「ああ、まぁな……」

 光がため息をついた直後だった。

「ヒカル様! たった今病院から連絡が!」

 勢いよく扉が開かれ、一人の男が息を切らして入ってきた。

 病院から、その一言に光は椅子を弾き飛ばすほどの勢いで立ち上がった。

「セルファ様が破水した、と!」

「修頼む!」

 伝令の男の言葉が終わるよりも早く、光は修へと振り返っていた。

「もう繋げたよ、行ってこい」

 笑みを浮かべる修に頷いて、光は走り出した。

 一歩目を踏み出した瞬間に景色が一変する。修の力で病院の通路へと瞬間移動した光は、セルファのもとへ向かった。


 病室で、セルファは生まれた子に授乳をしていた。

 光は隣でそれを見つめていた。

 優しい表情で子を抱いているセルファを見て、自然と光の表情も和らぐ。

 ふと、自分が生まれた時はどうだったのだろうか、そんな思いが過ぎった。記憶にあまり残っていない両親は、光をどんな思いで生み、抱いていたのだろう。答えの出ない疑問が、光の中に浮かんで、消えた。

「さすがに、私も驚いたわ」

 授乳を終えたセルファが、抱いている子の頭を撫でながら呟いた。

 分娩室へ光が辿り着いた時、出産は終わろうとしていた。光がセルファのもとへ駆け寄った直後、子供が生まれた。そして、取り上げられた子供が産声を上げる姿を見て、光もセルファも言葉を失った。

 産声を上げた時、子供の小さな体は淡い輝きに包まれていた。まばたきするような、ほんの一瞬だけ、その子は蒼と銀の輝きを放っていた。

「まさか、生まれた瞬間になんて思わなかったよ」

 光は苦笑とも微笑ともつかない表情で呟いた。

 確かに、あの輝きは能力者としての力だった。あれから力を纏う様子はなく、覚醒した、とは言い難いが、光の力を受け継いでいるということだけははっきりと感じていた。

「力なんて、無くてもいいのにな……」

 光の呆れたような口調に、セルファはくすりと笑った。

「……私は、嬉しかったわ」

 セルファが光を見て微笑む。

「だって、この子があなたとの子だって判ったから」

 続けられた言葉に、光は微かに目を丸くした。

「そうか……そう、だな」

 セルファに抱かれた子を見つめ、光は薄く微笑んだ。

「抱いてみる?」

「ああ、抱かせてくれ」

 セルファに頷いて、光はその小さな体を両手で抱える。

 小さな体は、それでも確かな重さと温かさをもって光にその存在を伝えてくる。

「その子か、お前の息子は」

 不意に、修の声が聞こえた。

 見れば、セルファのベッドの向かいに立つように修たちがいた。

「とりあえずマスコミの連中は締め出しといたぞ」

「悪いな、助かるよ」

 集まってきたマスコミは修が強制的に別の場所へ移動させたのだろう。光は修に苦笑で礼を返した。

 修の隣には彼の妻でありセルファの親友でもある有希ゆきがいる。刃と楓に翔、瑞希もいる。

 有希、楓、瑞希の三人はそれぞれ子供を抱きかかえていた。今年で一歳になる、去年生まれた子たちだ。

 光たちにとっての、次の世代、でもある。

 あの時、最前線で共に戦った者たちの子供が、ようやく揃った。

「おめでとう、セっちゃん」

「うん……ありがとう、ユキ」

 満面の笑みを浮かべて祝福する有希に、セルファが笑顔で礼を返す。

「名前は、もうあるんだろう?」

 薄く笑みを浮かべる刃の言葉に、光は頷いた。

火蒼優輝かそうゆうき……俺の、息子だ」

 我が子を見つめ、光は告げた。

 力の有無や強さなど関係なく、この子供たちが笑って暮らして行ける世界を創りたい。

 新たに生まれた息子の命を両腕に抱えて、光はそう思った。

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