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第一話 旅を振り返って その七

「翌日騎士団長の謝罪をディアン様は広い心で受け入れ、叔父様と一緒に豪華な朝食を頂きました」

「騎士団長に、じゃなくて、騎士団長が謝罪したの? 何でまた?」

「……師匠絡みだ」

「あー、納得」


 王国の相談役である師匠の権力は絶大で、かつ気紛れで知られる。

 地方勤めの伯爵では太刀打ちどころか、刃向かった時点で故郷を失ってもおかしくない。


「……ちなみにその叔父様って、シルルバ相談役って事?」

「あぁ。竜皇陛下の弟だそうだ」

「皇弟殿下って事か……。それは知らなかった……」

「私もだ」


 もっともその時はルビナが皇女と知った事で、それどころじゃなかったけど。


「その後は竜皇国に帰る事になりましたが、一日の猶予を頂き、ディアン様と劇を観ました。人と竜とが共に生きられないと言う結末に落ち込む私に、ディアン様は旅の中で私を知る事が出来たと言って、完全ではなくても分かり合えると教えてくださいました」

「あぁ、あの劇を観たんだ」

「知っているのか」

「王都でも一時評判だったからね。ちなみに騎士が竜の化身という話は、シルルバ様が提案したそうだよ」


 あれ師匠のせいだったのか!

 私の困難ってほとんど師匠のせいじゃない!?


「お昼は市場で色々な物を食べて、その後城壁の上に登りました。夕日の中明日別れる前の思い出にと口づけをお願いしましたが、ディアン様は親善大使になるからこれが最後では無いと言ってくださいました」

「へぇ、口づけ位でねぇ……」


 にやつくラズリー。

 だからこいつに旅の詳細は話したくなかったんだ!


「ちなみにディアン、特使として竜皇国に行くの、怖がってなかったっけ?」

「……あの時はな」

「竜を恐れているのに、私のために親善大使になると言ってくださって、本当に嬉しかったです!」

「ふーん、それはそれは」


 ラズリーは何かを確信したような顔で私を見る。

 何を察したか想像はつく。違うぞラズリー。多分。


「宿に戻ると女将さんが、お客さんを集めて宴を開いてくださいました。色々な方からお酒を頂き、とても楽しい会でした」

「へぇ、人気者なんだねルビナ嬢は」

「酒を水のように飲んでいたからな。大樽を空にするほどとは思わなかったが」

「そんなに飲めるんだ……」


 流石に表情が強張るラズリー。

 ちらりと酒の瓶を見たのを私は見逃さなかったぞ。


「部屋に戻った後、ディアン様のお話を聞きました。大切なお金を私のために使って頂き、申し訳なく思ったのですが、その、私の喜ぶ姿が、それ以上の価値があると、言ってもらえました……」

「ほほう」


 ラズリーは笑みを深める。

 そう言わなきゃ皮剥いだり目をくり抜くって言うんだから仕方がないだろ!

 そんな事は言えないので、私は無言で腸詰を頬張った。

手遅れに両足を突っ込んだ感のある十一話から十五話。


読了ありがとうございます。

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