表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/73

第八話 想いと向き合って その一

前話までのあらすじ。


皇女と竜の誇りを守る為、侯爵家令嬢を叱り飛ばしてしまった小心者の貴族ディアン。

詫びに来た侯爵家令嬢キーヤを側に置く事になって、より自らの立場が危うくなったディアンは、自分の過去の恋愛話を持ち出したり、執事の話に乗っかりたりと様々な手を講じるが、全て悪あがきの一言で収まってしまうのであった。


それでは第八話『想いに向き合って』お楽しみください。

 国王陛下との謁見を終え、控えの間でゆっくり息を吐く。

 何度やっても慣れない……。

 今は親善大使の仕事だから五日に一回だけど、毎日になったら心が保たないだろうなぁ。

 それとも毎日の方が慣れるんだろうか。

 早く爵位を返納して、身の丈に合った身分に戻りたい……。


「……キーヤさん、まだでしょうか……?」

「あぁ、軍務大臣との話が長引いている様だ」


 ……余計な事吹き込まれてなきゃ良いけど。

 ってルビナが催促? 珍しいな。

 ……顔が赤い?


「ルビナ、どうした。具合が悪いのか」

「……何だか、身体が、熱くて……」


 額に手を当てる。

 ……普段触れてないから違いが分からない!

 手を握ってみる。

 ……普段から温かいから違いが分からない!

 手近にあった鈴を鳴らす。

 扉の側で待機していたであろう侍女が入って来た。


「何かご用でしょうか」

「済まない。シルルバ相談役を呼んで来てもらえないか」

「し、シルルバ相談役でございますか!?」


 悲鳴に近い声を上げる侍女。

 ……無理かなぁ。王城内で国王陛下に次ぐ権力者だもんなぁ。

 そうしたらルビナの様子を見ていてもらって、私が呼んでくる方が早いか……。


「すぐに呼んで参ります! あぁ……! シルルバ様に直接声をかけられる機が巡って来るなんて……!」


 喜びを隠そうともせず、出て行く侍女。

 ……まぁ見た目は美麗だし、権力も魅力の一つか……。

 玉の輿狙いなら絶対にめた方が良いと思うけど。


「ディアン様……?」

「今師匠を呼んだ。きっと師匠なら竜の病にも詳しいだろう。少し耐えてくれ」

「叔父様が……。はい……」


 そう答えるとくたりと力が抜け、ルビナの身体が背もたれに沈む。


「大丈夫か。横になるか」

「……はい」


 返事と共に、私の方に倒れ込んで来る!

 えっと、あの、ひ、膝に頭が乗って……!


「はぁ……、はぁ……」


 えぇい! 戸惑っている場合か!

 少しでも苦痛が和らぐ様に、膝の上に乗ったルビナの頭を撫でる。


「ふぅ……、ぅ……」


 膝にかかるルビナの頭が重さを増す。

 力が抜けた様だ。呼吸も心なしか軽くなっている。

 ……竜の病、治るのだろうか。

 身体の強い竜の病だ。王国の薬では効かないだろう。

 そうなれば師匠に竜皇国に連れて行ってもらって、療養をする事になる。

 それで治れば良いが、もし重い病だったら……。


「ディアンさん、ルビナさん、お待たせしました!」

「キーヤか。そのまま入って来てくれ」

「? ……分かりました」


 キーヤが扉を開けて、入って来るなり、


「えっ!? ディアンさん!? それは一体……」


 顔を赤くして取り乱した。

 違う! 膝枕を見せつける為に入って来いと言ったんじゃない!


「ルビナが身体が熱いと言っていたので横にならせている」

「あ、そ、そうでしたのね」

「今師匠……、シルルバ相談役を呼んでいる。もし感染性のある病気だった場合、キーヤにも対応が必要だ。ここで待っていてくれ」

「わ、分かりました!」


 緊張の面持ちで、対面の長椅子に座るキーヤ。

 ルビナに目を落とすと、いつの間にか荒かった呼吸は寝息に変わっていた。

 とりあえずは安心か。

 師匠を待つ間に、情報を集めておこう。


「何かルビナの様子がおかしい事はあったか」

「いえ、昨夜も今朝も変わりなく……。むしろディアンさんが部屋に戻って来てくれた事で、より元気になっていたと思います」


 う、昨晩はご心配をおかけしました。

 風呂から戻ったキーヤに謝罪をしたら、笑顔で受け入れてくれたのは本当に有り難かった。


「……改めて、昨日は済まなかった」

「い、いえ、そんな……!」

「それと、ありがとう。私の為に心を配ってくれた事、感謝している」

「……あ、ありがとう、ございます……!」


 キーヤが弾ける様な笑みを浮かべる。

 当初の勘違い高飛車など見る影も無い。

 本当に私なんかの側に居るのが勿体無く思える。

 ルビナが離れたら私の価値は激減する訳だし、早いところナイトル侯爵家に帰さないとな。


「そうだ。お父上との話はどうだった」

「お義父上ちちうえ……!?」


 しまった言い方を間違えた!


「……軍務大臣殿からは、何かあったか」

「あ、えっと、これまでで一番褒められたかも知れません。それと、ディアンさんとルビナさんに、よくよくお礼を申し上げるように、と……」


 良かった。キーヤに対する評価は良い方向に進んでいる様だ。

 このままルビナと良い関係が続けば……。


「失礼致します。シルルバ相談役をお連れ致しました」


 楽観的になりかけた頭が、扉を叩く音で現実に引き戻される。


「やぁ我が弟子。私を呼びつけるとは余程の事だね。我が姪に何かあったかな」

「……ルビナが、身体が熱い、そう言って、今は眠っています」

「ふむ、どれ……」


 傍目にはただ見ているだけの様だけど、おそらく竜の魔法を駆使しているのだろう。

 どうか大病ではありません様に……!


「成程、思っていたより早かったね」

「師匠、ルビナの病気は一体何なのですか」

「安心したまえ。これは病気では無いよ」


 病気では無い、としたら一体……?


「おめでとう。我が弟子も父親となる時が来た様だね」


 ……は……?


 はあああぁぁぁ!?

こうのとり「ワシらとちゃうで」 甘藍きゃべつ畑「せやせや」


読了ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これはぁ 発情期ですねぇ・・・!
[一言] 手を繋いだだけで……。 マジですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ