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第一話 旅を振り返って その四

「さてさて、難しい話はおしまい。料理も酒も進んだところで、君達の旅の話を聞きたいな」

「旅の話か」


 ラズリーが手を軽く振ると、給仕や侍女が部屋から出た。

 成程、旅の話となれば、ルビナが竜皇の娘であり、竜である事も話さないといけなくなるから、この配慮は有り難い。


「ルビナ嬢とどう出会ったのか、どうやって竜皇国と国交を結ぶに至ったのか、これからのためにも聞いておきたいんだ」


 ふっふっふ。それに関しては、報告のために簡潔にまとめてあるぞ。


「師匠が竜と人との対等な関係を築く一策として、ある村を魔力を吸う結界に変えた。そこに近づいた竜が魔力を失い、尾を切られる事件が続いた。そこに捕まった竜皇の娘であるルビナを私が引き取って、師匠の助力の上で竜皇国に帰した所、これを機に王国と国交をという話になった。以上だ」

「成程。シルルバ相談役が噛んでた訳だ。ふむふむ」


 頷くラズリー。


「でも、それだけじゃ分からない事も多いなぁ。ルビナ嬢、詳しく説明してもらえる?」

「はい」

「待てラズリー」


 ルビナに話を振ろうとするラズリーを、慌てて押しとどめる。


「今の説明では不服か」

「君のは簡潔過ぎて面白くないよ。お酒の席なんだからもっと面白くさぁ」

「ルビナにあまり無茶を言うな」

「あぁ、面白くと言っても、別に喜劇を真似しろなんて言わないさ。君が喜劇仕立てで語ってくれるなら聞くけど」

「……無理だ」


 確かにこの七日間は、他人事として聞けば十分に喜劇だろう。師匠爆笑してたしな。

 しかしそれを面白可笑しく語れる程、時間が経っている訳じゃない。赤面して崩れ落ちて泣くぞ。


「それにさ、異なる視点から見れば、君も知らない旅の成果が見られるんじゃないかなって」


 ……確かにルビナがこの旅をどう捉えているかは気になる。

 ラズリーに知られるのはあまり好ましくないが。

 絶対揶揄(からか)うだろ。確信に近い信頼感がそこにある。


「それに僕が事情を知れば、君では解決できない事でも、何か知恵を貸せるかも知れないよ」

「成程……」


 目下の懸案であるルビナが私への依存から離れる方法については、具体的に考えられていない。

 これまでの経緯をラズリーに教えておけば、何か良い考えが思いつくかも知れないな。


「分かった。しかしルビナ、全てを話せば長くなる。出来るだけ簡潔にな」

「分かりました」


 そう言うとルビナは、胸に手を当てて目を閉じた。

 記憶を思い返しているんだろうけど、その動作は宝物の入れ物を開けるかのようだ。

 目を開けたルビナはゆっくりと語り出した。

簡潔にまとめると詳しくと言われ、詳しく話すと端的にと言われる不思議。


読了ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだろう 壮絶な旦那礼賛と猛烈なのろけの予感がひしひしとするゾ
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