第六話 陰謀は音も無く 騒動は高飛車に その二
「初めまして。ナイトル侯爵家が三女、キーヤですわ」
「初めましてキーヤ・ナイトル侯爵家令嬢。子爵ディアン・オブシでございます」
そう名乗った少女は、私に軽く頭を下げた。
少し険の強い顔立ちだが、美しい娘だ。
私みたいな成り立て子爵なんかより、もっと地位の高い家に嫁がせた方が利があるんじゃないか?
「ふふん、私は侯爵家令嬢、貴方は子爵、この立場の差の上で口をきいてもらえる事を、心より感謝する事ですわ」
うわー。何この態度。
確かに私は平民上がりの子爵、そちらは生まれた時からの侯爵家令嬢でしょうが、初対面でここまで言う?
「それで? 竜の皇女と言うのはどこですの?」
ルビナを竜と知っても動じないのは流石だけど、気丈ってこう言う事だったっけ?
相手を見極めてから、とルビナを自室に待たせておいて良かった!
「この度はご足労頂き心より感謝申し上げます」
「そうね。もっと心を込めて礼を言いなさい」
「本日はお忙しい中ありがとうございました。今送りの者を呼びますので」
「は?」
とにかくとっとと帰らせよう。
ナイトル軍務大臣は何を考えてこんな娘を寄越したんだろう。
仮にもルビナは国賓だぞ?
失礼があったらって考えなかったのか?
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何で会ってすぐ帰らせようとするのよ!」
「いえ、高貴な身の方のお手を煩わせるのも申し訳ない事ですので」
「わ、わざわざ来たんだから、その竜の皇女の顔位見せなさいよ!」
どうせこの娘も嫌々来てるだろうから、早く切り上げた方がお互いの為だと思うんだけど。
「では少しお待ちを」
とりあえず顔だけ見せて帰そう。
自室の扉を叩く。
「ルビナ」
「はい!」
扉開けるの早いなー。良く躾けられた犬みたいだ。
……頭に伸びるこの手は何だ。ゆっくり戻す。
「客人がルビナに会いたいと言っている」
「分かりました!」
「だが相手は侯爵家令嬢で、気位が高く、見下した様な言動が見られる。不快な思いをするかも知れないから、我慢ならなくなったら言うと良い」
「分かりました。でもディアン様が側に居てくださるなら大丈夫だと思います」
……何の根拠があるんだそれ……。
しかしそこまで言われた以上、やれる限り守らないとな。
侯爵家令嬢相手に私に出来る事なんて大して無いけど……。
「では行こう」
「はい!」
楽しそうに廊下を歩くルビナ。
新しい人間関係に期待をしてくれているんだろうか。
……期待に沿える事は無いだろうな。
ルビナがこれで人間に対して悪感情を抱きません様に、それだけを祈って応接室の扉を叩いた。
べたな悪役令嬢の登場、ディアンの辛い感情に同情。
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