ブルク20世の憂い
ブルク20世は桐斗殿の話を聞いた後すぐ様暗部をバウムッド帝国最西端の街ラフレシアに向かわせた。
ラフレシアは北から南に縦に長く出来ている街であり、バウムッド帝国内では二番目に人口の多い町でもあった。
聖王国アランドブルクの暗部はそのラフレシアで驚くべきものを見つけた。普段から魔王軍戦で援軍によく来てくれている将軍達が聖うさぎ王国進軍の方法を議論しているだけではなく、
明らかに都市防衛の為だけではない数多くの兵士の他に教皇軍までも訓練をしていた。
これは予想以上だった。すぐ様聖王国アランドブルクの暗部はアレクサンドリアのブルク20世の元に戻った。
暗部の情報を元にブルク20世はバウムッド20世に手紙を送る。内容は
「此度の魔王軍襲来の折、貴国はなぜ援軍を今回ばかりは送って頂けなかったのでしょうか?
更にはいつもの援軍の面々がなぜラフレシアに滞在しているのでしょうか?
貴国は世界同盟を軽視しているのですか?
ご返答をお願いします」
手紙を受けてバウムッド20世はブルク20世に手紙を返す。 内容は
「此度の魔王軍戦に際して援軍を送れなかった事を平に謝罪致します。
現在我が国は聖うさぎ王国との戦争中であり、
もし我が国が魔王軍戦に援軍を送ると聖うさぎ王国に隙を作り攻められるかもしるはないからであります。
聖うさぎ王国との戦いが終わらぬ限りは我が国も魔王軍戦に参軍できかねると先にご報告致します」
ブルク20世は手紙を読んで頭を抱えた様子だ。
魔王は進化して強くなるわ、世界同盟はバラバラだわ、援軍は期待できないわで、どこから手を出して解決して良いのかわからなくなっている。
どの国も好き放題にやっていたら本当に魔王軍に人類は滅ぼされてしまうぞ?いや待てよ!?
大魔王とそれなりに戦えた勇者をあっさりと魔法なしに倒した精霊術士桐斗の存在!
もしや桐斗はイメリア大陸の統一を狙っているのではないだろうか?
マウリア王国の崩壊に始まりイメリア公国の懐柔、魔法入りシェイカーの販売。更には今現在大陸中央部に建設中の城郭都市の存在。
点と点が繋がる感覚を覚えたブルク20世はアラルド共和国とイメリア共和国に自らの予想を書いた手紙を書いて送った。
おそらくは販売している魔法入りシェイカーは桐斗相手だとダメージを喰らわない程度の魔法しか込められてないのだろう。
アラルド共和国それは民主主義国家である。
4年毎の選挙で大統領が選ばれて、閣僚が決まる。
つまり大統領にとっては選挙が全てである。
今回の魔王軍襲来で領土の半分を失った。
次の選挙までに領土を取り戻さないと現政権は
次の選挙で負けてしまう。
大統領に任期の制限はない。
現大統領は12年もの間
独裁政権を維持している。
もちろん外相もだ。長年外相をやっている為他国との駆け引きや交渉も段々と上手くなっていた。
そんな外相の元にブルク20世から聖うさぎ王国が大陸全土の統一を狙っているとの手紙が届く。
「アホらしい。」
アラルド共和国外相は次の選挙で勝てるかが大事なのだ。その為には聖うさぎ王国ではなく魔王軍を何とかしなければならない。
聖うさぎ王国との貿易で得られる魔法入りシェイカーは魔王軍を撃退するのに非常に効果は高い。
領土奪還には魔法入りシェイカーが不可欠だ。
つまり聖うさぎ王国はアラルド共和国にとって良き
取引相手だった。
「あの国からの心象は悪くしたくない。」
アラルド共和国外相はブルク20世に聖うさぎ王国の
良さをこれでもかとしたためて手紙を返信した。
同じくイメリア16世もブルク20世の手紙をバカにした様に読んでいる。
「聖うさぎ王国に信頼されてない国々は哀れだな」
イメリア16世は思わず呟いた。
我が国は結界に守られて、此度も魔王軍は攻めて来なかった。更には攻められても聖うさぎ王国から援軍までくる。魔法入りシェイカーも在庫が万単位である。
それは魔王軍100万の軍勢を殲滅できる兵器を所有しているに他ならなかった。
イメリア16世も聖うさぎ王国の良さをこれでもかとしたためて、そんな在らぬ妄想を抱くから貴国は聖うさぎ王国に信頼されないのだと最後は批判した。
返事が届いたブルク20世は諦め顔だ。
しかし人類存続の為いや聖王国アランドブルクの為にイメリア16世に聖都アランドブルク奪還の為の援軍を要請した。勇者の名前をこれでもかと使って
渋々ながらイメリア16世は大量の報酬と引き換えに
援軍を出す事を受諾する。




