品評会②勇者VS桐斗
魔王軍が大勝利に終わった後
桐斗はレベルが結構上がっている事に気づいた。
これは何か大きな戦があったなと予想できた。
きな臭い雰囲気を感じて
桐斗は直近の聖王国アランドブルクと聖うさぎ王国との境界線で毎月18日に行われる品評会に出る事にした。
会場には普段いるはずの貿易官の他にブルク20世、アラルド共和国外相、勇者クリムドの姿があった。
何かいつもより荷馬車少なくないか?
まぁとりあえず挨拶に向かう
「お久しぶりです。ブルク20世
今日はまた珍しい顔触れでいらっしゃって。
何かございましたか?」
「お久しぶりです。桐斗殿
魔王軍が攻めて来た事はご存知ですか?」
「いいえ!イメリア公国から援軍の依頼も無かったので知りませんでしたよ。どうなったのですか?」
「実は魔王が大魔王に進化していて、
その大魔王エターナル自ら聖王国アランドブルクとアラルド共和国に進軍してきまして、
我ら両国とも首都を奪われて南部の町に後退しております。何卒お力をお貸し頂けないでしょうか?」
桐斗は難しい顔をした。元人間として少し同情したからだ。しかしまず聖うさぎ王国を第一に考えなければならない。桐斗は聖うさぎ王国の精霊王である。
「具体的には?一体何をお望みなのですか?」
『首都の奪還及び大魔王の討伐と結界付与をお願いします』
アラルド共和国外相とブルク20世と勇者クリムドは揃って頭を下げてきた。
「一つお聞きしますがその戦争でバウムッド帝国から援軍はありましたか?」
「いや無かったです」
「ならば丁寧にお断り致します。
まずいいですか?あなた方特権階級の者達は民の為に率先して盾にならないといけないのに、
逃げ出している。
自分の国は自分で守るという気概がなさすぎる。
更には私がノコノコでかけたら真っ先にバウムッド帝国が聖うさぎ王国に攻め入ってくるこの現状で他国を救済なんかできませんよ」
桐斗は責任感の無い首脳陣を激しく責め立てた。
明らかに他人任せで自分で何とかする意志を感じなかったからだ。
「なぜ桐斗殿が魔王軍を討伐に向かうとバウムッド帝国が攻めてくるとわかるのですか?」
「ブルク20世ともあろうお方がそんな事もわからないのですか?貴方は世界の情勢に疎く無い筈だ。
いいですか!バウムッド帝国は極度の女神教を崇拝する国家だ。その教えは人間至上主義。
だから人間以外が統治している国に容赦しない。
ブルク20世も調べてみたらどうですか?
多分今も聖うさぎ王国とバウムッド帝国の境目付近の街には兵士がいつでも動けるように大挙して待っていますよ。
更には聖うさぎ王国内にも暗部と思わしき者達が入り込んでいます。
今1匹1匹退治して回ってますがキリがない」
「なるほど先の戦で桐斗殿にコテンパンに
バウムッド帝国軍は敗れましたからな。桐斗殿の留守を狙ってまた再度攻勢にでる可能性は確かに高いですね」
ブルク20世とアラルド共和国外相は困った顔をする。
「大魔王討伐は勇者である私の役目であるのは分かっている。わかっているのだが、
先の戦いで力の差を感じた。
何とか一度だけでも共闘してはくれまいか?」
「はっきりいいます。
貴方がここにいるメンバーで一番信用できません。
貴方は女神に選ばれて勇者になったと言っていましたね?ならば貴方は女神教の手先の可能性が高い」
「いや私は女神から人間達を魔王の手から救って欲しいと言われただけだ。
女神教は確かに信仰しているが、
居は聖王国にある。
バウムッド帝国と決して繋がってはいない。
信じて欲しい。」
勇者クリムドは慌てて弁明を繰り返す。
「まぁ次に魔王軍が襲うとしたらイメリア公国でしょうね!北と東から挟み撃ち出来ますからね。私はイメリア公国とは軍事同盟を結んでいるので駆けつけますが、その隙に勇者クリムドを先陣に首都奪還したら如何ですか?これも立派な共闘では?」
「桐斗殿は単騎で大魔王に勝てると思っているんですか?」
「勝てる勝てないの話では無い。
絶対に勝つという信念が大事です。
私はまだ6歳ですがずっと常に自分が死んだらうさぎ達が滅ぶのでどんな手を使っても勝ちにいき、
うさぎ達を必ず護り通すという信念で戦っています。勇者クリムド貴方は私より年齢も勇者になってからの活動歴も長いはずなのに、
私より遥かに弱く見える。何故ですか?」
勇者クリムドは俯き無口になる。何も言い返せない。
そんな勇者クリムドに更に桐斗は責め立てる。
「貴方は信念も弱いどころか強くなる努力すら怠っていた。
だから精進して進化した大魔王にも負けた。
だから戦争にも負けて聖王国アランドブルクは領土を失った!違いますか?」
「桐斗殿悪いが真剣勝負をして貰えないだろうか?」
意を決して勇者クリムドは桐斗と真剣勝負を挑む。
もし桐斗が想い上がってるなら大魔王の強さを伝えられるし、桐斗が勝つなら勇者クリムド自身の研鑽が足りないだけだからだ。見極める必要があった。
「構いませんよ」
桐斗はスキル赤い彗星を発動した。
素早さが2倍になった。
桐斗は変身して人間の姿になり腰の聖剣を抜く。
「貴方は精霊術士で魔法使いじゃないのですか?」
「ハンデですよ。私は魔法を使わず剣のみで勇者の力量を測って差し上げます。貴方の得意とする近接戦でね。」
「死んでも恨まないでくださいね」
勇者は聖剣を抜き駆け出した。
桐斗は絶対うさぎ達の為に死ねないと強く思う。
するとエクストラスキル毘沙門天が発動した。
キンキン!カンカン!シュシュシュ
もう受ける必要すら感じない。
数合の斬り合いで分かったがこの勇者クリムド酷く遅い上に一撃一撃が軽い。
自分が強すぎるだけかもしれないが、
想いも強さも剣からはまるで伝わってこない。
あー勇者って器用貧乏って前世のラノベに書いてあった気もする。
勇者クリムドは剣での斬り合いでも優勢に立てない所か余裕でかわされ続けている事に驚いている様子だ。
勇者クリムドは遂に必殺技を放つ
「ハンドレットホーリー光爆撃」
100本もの聖剣が魔法で創り出されて桐斗に波状攻撃を仕掛けてくる。
桐斗はそれを全てかわし続ける。
勇者の必殺技も数だけで速度も遅すぎて欠伸がでる。
全てかわした後勇者クリムドの首元に聖剣を背後から押し当てる。
「まだやりますか?」
「私の完敗だ。先程の必殺技は大魔王エターナルの腕を斬り落とすまでは出来たのに
今回は全てかわされた」
「なら大魔王エターナルって全く強く無いですね。勇者クリムドは私を頼る前に自分自身を鍛え直した方がいいですよ。
貴方の剣は弱く遅い。何より剣から伝わってくる想いが弱すぎる。
例え私が手を貸した所でそれは一時凌ぎだ。
もし私が第二の魔王になったらどうするんですか?
勇者クリムド貴方自身がそんなに弱ければ人類を守れませんよ」
桐斗の言葉は勇者の心に突き刺さる。
正直何も言い返せない。
「...ああ頑張ってみるよ」
勇者クリムドは去っていった。
桐斗はあの勇者クリムドが上手くやって俺をティムする気だったのではないかとふと思った。
「ブルク20世、アラルド共和国外相貴方達がとれる選択肢は3つしか無いです。
①イメリア公国を動かして、西と南から挟み撃ちにして領土を取り返す。
②聖うさぎ王国と共にバウムッド帝国を滅ぼす
③イメリア公国を何とか説き伏せて、バウムッド帝国と三方から聖うさぎ王国に攻めいる
さぁどれにしますか?」
「①しかないですね」
「私も①しかないと思います」
「ならあの役立たずな勇者クリムドを鍛えて何とか領土奪還頑張ってください。
陰ながら応援してます。
あー品評会をはじめましょう。
今回は魔法入りシェイカーの数おまけしますんで」
桐斗は敗戦国からもガッポリ外貨を稼いだのだった。
しかし思った以上に勇者は弱かった。
前世の漫画では勇者とは世界一の強さを誇ってたはずだ。代を重ねる毎に勇者の質も落ちたんだろうなと桐斗は嘆いた。
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