世界同盟の亀裂
マウリア王国の大量の難民は聖王国アランドブルクとバウムッド帝国に押し寄せた。
ブルク20世は堪らず諸外国に要請して
世界同盟会議を開いた。
一週間後聖王国アランドブルクには列強諸国の重鎮が集まった。
「此度のマウリア王国内で起きた争いに関して事の顛末をマウリア王国第二皇子フランク殿よりご説明頂きたいと思います。」
「我が弟フランシスがマウリア王国の南部から密かに兵を挙げて10万もの大軍でフーデリカの街を占領し、簒奪を行いました。
その勢いのままラパンの森に総攻撃をくわえるために進軍しましたが、あえなくマウリア王国軍は敗北。
ラパンの森勢力は勝利の勢いそのままにマウリア王国南部からマウリア王国の街を各個撃破して回り、
マウリア王国内に聖うさぎ王国が誕生しました。
その影響でマウリア王国の難民は聖王国アランドブルク、バウムッド帝国に押し寄せる次第となりました。」
「完全にマウリア王国の失態ですな」
イメリア公国外務大臣は辛辣だった。
「他人事ではない!大量の難民に我が国は混乱しているのですぞ」
バウムッド帝国外務卿はお怒りだった。
「我が国も同じです。ところでイメリア公国は先の混乱に乗じてマウリア王国ミノン一帯を手中に収めたと報告にあります。これは一体どういう事でしょうか?」
「我が国はラパンの森勢力との間に和親通商条約と相互軍事同盟を結んでいたのです。
ラパンの森勢力からはマウリア王国の侵略作戦が起こったらミノンに攻め入るよう要請がありましたからね」
「世界同盟はどうなったのですか?我々は同盟を結んでいたはずです」
フランクはびっくりしてイメリア公国外務大臣を問いただす。
「それは魔王軍に関しての内容だったはず。
実際我が国は昨年に魔王軍30万の襲撃を受けましたが、ラパンの森勢力の助力のおかげで我が国は被害なしに僅か3時間で壊滅できました。」
「貴様!我が国を売ったな」
「依然にもお伝えしたかと思いますが我が国はラパンの森勢力との親交に努めると宣言したはず。
現に昨年の魔王軍襲撃で役に立ったのは他の列強諸国ではなくラパンの森勢力でした。
売国奴呼ばわりは甚だ心外ですな。
実際ラパンの森勢力に一方的に喧嘩をふっかけたのはマウリア王国のはず!
ラパンの森勢力は後顧の憂いをたっただけかと思いますよ」
「ではイメリア公国は世界同盟についてどういう立ち位置を示すおつもりですかな?」
「世界同盟?去年の魔王軍襲撃で列強諸国から一切援護をして貰えなかった我が国が世界連盟に一体何を望むというのですかな?
我が国は更にラパンの森勢力と強固な同盟関係構築に励みます。
あ〜一様我が国は世界連盟加盟国から抜ける気はないので悪しからず!逆に列強諸国に問いたい。
聖うさぎ王国を国として認めるのかどうかを!
我が国は聖うさぎ王国を国として認め、
聖うさぎ王国に侵略戦争を企てる国があれば聖うさぎ王国援軍を出して食い止める所存です。」
「私は認めません」
フランクからしたら認められないだろう。祖国が無くなり世界から認められなくなるのだから。
「私も認められないマウリア王国からの大量の難民で我が国は困っている。
何より人間の国でない国が隣に出来て我が国の難民が勝手にラパン勢力に喧嘩を売ったら次はバウムッド帝国まで攻められるではないか」
「私もその意見には賛成だ。
些細な事からトラブルになりラパンの勢力からも攻められたら魔王軍から挟み撃ちにあってしまう。
後方に不安は残したくないですな」
「我が国はバウムッド帝国と聖王国アランドブルクに協力致します。」
イメリア公国以外の国は聖うさぎ王国を国として認めない立ち位置らしい。
「聖王国アランドブルクとバウムッド帝国が聖うさぎ王国に宣戦布告するなら、
我が国は聖うさぎ王国に協力します。
戦場で相見えることになるでしょうな!
しかしよく考えてみて下さい。
これだけ短期間でマウリア王国を滅ぼした聖うさぎ王国にあなた方は本気で勝てるとお考えですか?
とても正気には見えない」
「我が国には勇者もいる。聖うさぎ王国が人類の敵になるなら戦争も避けられませんな」
「我が国は条約まで結んで友好関係にあるんですよ!聖うさぎ王国が人類の敵?
魔王軍とも戦っておられる聖うさぎ王国を敵だといいますか?認識違いも甚だしい」
ここでブルク20世とイメリア公国外務大臣の論戦は激しさを増す。
「聖うさぎ王国は世界同盟に亀裂を生む為にイメリア公国は条約を呑んでいるかもしれないのですよ?イメリア公国も慎重に外交関係を考えられよ」
「聖うさぎ王国との軍務条約なしには去年の魔王軍襲来で我が国は恐らく滅んでいた筈。命の恩人に敵対するなど我が国は取れませんな!それが世界同盟に亀裂が生じても」
かくして世界同盟には亀裂が走った。マウリア王国が滅び、イメリア公国が聖うさぎ王国の味方をすると宣言したからだ。




