勇者との出会いに覗き見る者達
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ダークウルフがブレスでどんどん燃やされている。
うさぎの立場から見て彼と竜は敵ではないが味方でもないだろう。
情報収集の為こちらも近づいていく。
大方倒し終えた彼と竜は此方に近づき地面に降り立った。
「はじめまして今代勇者を務めてるクリムドだ。魔王軍討伐した魔法実に素晴らしかった」
「こちらこそはじめましてラパンの森精霊術士の桐斗です。私は私の家族と森を守っただけの事です。」
「そうかならば貴君はうさぎなんだな?」
勇者クリムドは人間に変身した桐斗をマジマジと見る。
「はいそうです。」
「単刀直入に言おう。是非人間側について共に魔王軍と戦って欲しい。魔王軍の卑劣な行動の阻止で手一杯なのだよ。君がいると助かる」
過去には勇者に手を貸して魔王を撃退した精霊術士もいると文献にはあった。その為勇者クリムドは誘ってみたのだ。しかし
「お断りさせていただきます。
人間も魔王軍も我らラパンの森でうさぎを狩り狙う事には変わらない。
人間が勝とうが負けようが私には関係がない。
私は常にうさぎの為だけに動きます!
そう決めてるから」
桐斗は高らかに宣言する。
「たしかに人間も魔物もうさぎを捕食するという点は変わらない。
そうか。残念だ!もし気が変わったら聖都アランドブルクを訪ねてきてくれ。」
「いや私はこの世界に疎くて、ラパンの森から出た事ないからアランドブルクがどこにあるのかはわからないんです。」
桐斗は世界の世情や地理に疎い事を恥じた顔を作る。
「なら地図をやろう。機会があればまた」
そう言うと勇者クリムドは竜に乗り北東方面に飛んで行った
アンナが心配していると思い、一路ラパンの神殿へ帰る。桐斗はアンナに完全にお熱である。
その様子を覗き見ていたのは嗤う傭兵団の偵察シャドーだ。
偵察で森に入るときにちょうど良いタイミングで結界が割れた為シャドーは残り2人と分かれ一人ラパンの森北端を目指していた。
魔法がバンバン鳴り響いてたからだ。
桐斗と名乗る精霊術士は単騎で魔王軍5000余りを壊滅させていた。あの戦いぶりからして勇者クリムドと互角以上の強さはあると感じた。
こんな奴と戦うなど正気ではない。残り2人を回収して偵察を終わらせなければ殺される。シャドーは自身が持つ最大のスピードで森の端へ駆け抜けていく。
森から抜けると黒い煙弾を空に放った。意味は撤退である。
精霊術士の拠点を探すべく二手に分かれたもう片方の
ダガーとイメルダは匂いを頼りに着実にラパンの神殿に迫っていた。
後一歩の所で神殿を守る結界を発見して進めないでいたのだ。すると遠くの空から黒の煙弾を発見した。
シャドーは偵察隊の隊長だ。隊長が撤退を指示したなら従えば良い。ダガーもイメルダも桐斗と遭遇する事なく撤退に成功した。
赤い林檎邸に戻ったシャドーとダガーとイメルダは
嗤う傭兵団団長ムハンマドに報告をした。
「何!!勇者と同等以上の強さで魔王軍5000を一瞬で壊滅だと!?」
ムハンマドは一瞬シャドーの言葉を疑ったが、シャドーは嘘をつくような奴ではないと思い出し難しい顔をした。
「シャドー済まないが偵察報告をブルトにもしてやってくれ!
そしてこの依頼からはウチは手を引くと言っておいてくれ」
達成が可能か不可能かは敵戦力をまず調べてから依頼を受ける。これは冒険者なら当たり前という訳ではない。
実際わからない場合も多数ある。しかし嗤う傭兵団は調査を必ずしてから依頼を受けるようにしており、この用心深さで今まで生き残ってきた。
ムハンマド達嗤う傭兵団は酒を飲み切るとヤドンの村を後にした。
その頃勇者クリムドは聖都アランドブルクに到着して聖王ブルク20世に報告をしていた。
魔王軍5000匹を1時間かからず殲滅し、現代魔法とは違う魔法を多重で放ち、魔法を貯蓄までできる精霊術士 桐斗
彼は魔王軍にも人間側にも付かずラパンの森の守護者をしている。
その情報はイメリア公国と聖王国アランドブルクの上層部で共有された。
しかし今の力だと勇者クリムドは桐斗が魔王にも自分にも勝てないだろうと感じていた。
ブルトは偵察報告を受けて直ぐに冒険者ギルドのギルマスに指示を仰いだ。
ギルマスは天井を一回仰ぎ見た後ブルトに向き直り
「ラパンの森の依頼を全て取り消す」
と宣言した。
ブルトはもちろん弟の仇を撃ちたかった。
悔しげな顔を浮かべ、ブルトもヤドンの村を一時離れた。




