とあるシェアハウスの早朝。
七月が近付いた梅雨のある日。
ただでさえ湿気と気温のせいで寝苦しい夜が続くのに私は昼寝をしてしまったが故に眠れないまま日の出を迎えてしまった。
私は頬を伝う汗を拭ってドアを開けた。
なにか冷たいものを取ってくるために。
私が一階に下りると一人の少女がソファに座っていた。
サメのぬいぐるみを抱えた少女はこちらに気がつくと呆れた顔をして
「まーた寝てないのか…」
と呟いた。
「いやー、盛大にお昼寝をしてしまってね?」
そう言いながら私はスマホをいじる彼女の背後を通り過ぎる。
大きな冷凍庫から二本のアイスを引っ張り出して私は彼女に背を向けつつ聞いた。
「チョコとバニラ、どっちがいい?」
両手にアイスを持って振り返った私の目に映ったのは宙に浮く古代鮫を、叩いて撃退しようとする猫。
猫は少女の頭の上や膝の上を駆け回っている。
「えっと…これ僕はどうしたらいい?」
猫が乗ったままだからなのか困惑した様子の彼女は顔の向きをこちらに向けずに聞いてきた。
私は
「うん…とりあえずはしばらくそのままかな…」
と答え、苦笑いを浮かべた。
空飛ぶサメ、それを追いかける猫、動けなくなってしまった少女。
また、賑やかな1日が始まるのだろう。
そんなことを考えつつ私は右手に持ったチョコアイスを一口頬張った。
少しだけ、涼しく感じる空気を吸って
「ははっ」
と笑った私の腕にある時計は5時を指していた。
街がまだ目覚める前のことだった。




