1.邂逅
「フハハハハ‼︎この召喚が成功すれば、もう勇者など敵ではない‼︎」
辺りに轟音が鳴り響き、床に描かれた巨大な魔方陣から光が溢れる。
そして現れたのはーーー
ーーー1人のニートだった。
状況を説明するぜ!部屋でアニメ見ながらポテチ食ってたら視界が光って気づいたらここにいた。
でかい部屋に豪華な装飾。しかしどこか不気味さを感じさせる。
そして目の前には2mはありそうな怖いおっさん。
意味わからん。
「フハハハハ‼︎召喚は成功したようだな‼︎」
「召喚?」
「そうだ。お前は勇者を殺すために、勇者と同じ世界から召喚されたのだ。誇りに思え‼︎」
「俺が勇者を殺す?俺はただのニートだぞ?」
「ニートとはなんだ」
「働かないという鋼の意思を持った者のことだ。俺はニートを極めようと日々研鑽を積んでいる」
「そうは言ってもこちらでは働いてもらわないとな」
「それになぜ俺なんだ?俺なんかが勇者と戦っても、瞬殺されて終わるだけだぞ?」
「勇者の元いた世界から、もっとも戦闘力の高い個体を選んだはずだが。実際お前からは強大な力を感じるぞ?」
何だと?元の世界では運動神経もそこまで良い方ではなかったし、もちろん戦闘経験もない。何かこちらに来て変わったのだろうか。
「心当たりがないな。どういう事だ?」
「お前は、体こそ貧弱そのものであるがそれを補って余りある魔法的素養がある。前の世界で鍛えたものではないのか?」
「俺の世界には魔法なんてなかった。魔法の使い方なんて微塵もわからん」
「そんな大層なものではない。念じればできる。頭の中のイメージを具現化するのが魔法だ。それが現実と乖離しているほど、また精緻であるほど高い魔力が必要となる」
「ここでやってみていいか」
「あまり周りを破壊するなよ。お前が本気を出せば恐らくこの建物が吹き飛ぶ」
「そこまでか…」
意識を集中する。イメージするのは氷。自分から同心円が広がっていくように。
すると俺のイメージ通り、茨のような氷の畝が部屋中に広がって行く。
「簡単にできるもんだな」
「見事だ。これからはその力で我に協力してくれ」
「断る」