第二章 憎悪
ていうかリアルのフリードリヒ可哀そすぎ!
俺の父親である、フリードリヒ・カイザー・アウグストは統治者として諸国にある程度知られる人間だ。
徹底的なリアリストであることを耳にした人もいると思う。
・・・他に付け加えることがあるとすれば、ヤツが俺を愛してはいない事ぐらいだろうか。
親父が俺を愛していないことには14になるまで気づかなかった。
全精力を政治傾けてきた親父は40歳を過ぎてからしだいに後継者のことを考え始め、
何を思ったのか、六歳の俺に軍事書を読まそうとした。
自分のやり方に絶対的な自信を持つヤツは、基本的にガキの教育方法につかわれてる「理解してからの暗記」という学習方法でなく、
「暗記してからの理解」とかいう無茶苦茶なのを押しつけた。
暗記できず晩飯を奪われ、殴られて泣きながらも暗記をさせられた哀しさは、今でも覚えている。
親父の授業は俺が14になり、ある事が起こるまで続いた。
事の発端は俺が親父の意向に逆らったことにあった。
実際に応用できる科目以外に学問というものに興味のなかった親父は俺にもそれを強要した。
俺が教えられたのは、国語の単語や文法、社会科系全般、数学、科学など「実用的な」科目だけだった。
音楽や文章読解といった科目は「時間の無駄」という理由で存在自体が無視されていた。
そんな「実践的な科目」以外教えられていない俺に、音楽や読書の楽しみを教えてくれたのは母さんや姉貴だった。
スパルタに次ぐスパルタでボロボロだった六歳の俺に、
姉貴が弾いてくれたピアノがどれくらい落ち込んだ俺の支えになったか。
母さんが語ってくれた物語がどれだけ疲れた俺に夢を持たせたか。
すぐに俺は自分で聞きたい曲を選ぶようになり、読みたい本を読むようになった。
また、バカABが、護身術やフェンシングしかやらされなかった俺に、
サッカーやバスケ、バレーボールといったスポーツを教えてくれた。
もっとも、俺たち三人でできる事といったらパス練習やシュート練習位のものだったが。
・・・親父は、俺が親父や家庭教師以外の人間から何かを学ぶのを、徹底的に嫌っているふしがあった。
親父と俺の溝は深まっていき、14になった俺がお古の教科書を売って読書用の本を買った
事で徹底的に対立することになってしまった。
本を売って三日後、突然親父の部屋に呼び出された俺が見たものは衰弱しきったバカ共、
やつれた母さんと姉貴、灰になった本とピアノの残骸だった。
一向に従わない俺に業を煮やした親父の憎悪は、俺の周囲の者へと向かっていた。
バカ共は水すらも与えられず脱水症状を起こしかけているようだった。
母さんと姉貴はさすがに暴力は振るわれなかったみたいだが、怒り狂った親父に罵倒され続け、精神的に限界にきているようだった。
泣きながら謝る俺に親父は、
「父親からこんな事をされたら俺は自殺するが」と言い、部屋を出て行った。
その時、俺はようやく気づいた。
親父が俺を愛していない事に。
そして、俺以上の苦痛を肉体や精神に受けたバカ共、母さんと姉貴。
彼らは一言も俺を責めなかった。泣いている俺に対し,彼らが言ったのは
「守ってやれず(あげられず)すまなかった(ごめんなさい)」という言葉だった。
このとき俺は誓った。
もう二度と、彼らに辛い思いはさせないと。
翌日から俺は、親父と家庭教師の教える科目、フェンシングと護身術に全力を注ぐようになった。
趣味を捨てた俺を皆は心配していたが問題はなかった。
すべては親父を超えるためだから。
マリア=テレジア、いつ出そうかな・・・。
読んで頂いてありがとうございます。
専攻が世界史でないので間違っているとこあったら
ぜひ教えてください。