クリスタルのヒール(第7章)
舞踏会が終わった翌日から母と姉はため息ばかりついていた
それはわたしも同じことだった
勢いシンデレラに辛くあたってしまう
街では舞踏会場に突然現れ、そして飛び出していった謎の美女の噂で持ち切りだった
噂では王子も「自分に何か落ち度でもあったのか?」と悩み落ち込んでるらしかった
王家の召し使い達も謎の美女を探しきれず、唯一の手がかりは彼女が舞踏会場から走って飛び出した時に外れた『クリスタルのヒール』の片方だけだった
ふと、謎の美女が舞踏会に来なかったら?と思った
姉は上手くいったかもれしれない
わたしはわたしで夢心地で幸せだったのに…
でも終わったことだし、何より彼女の有無も言わせない美しさの前では無意味だと思った
彼女の演出による、彼女の為の舞踏会だったとしか思えなかった
羨ましく、妬ましかった
わたしは、また同じ日常が繰り返されることが憂鬱だった
それからも謎の美女の行方はわからなかった。ただ街から郊外に繋がる道はすぐに王室の召し使い達による検問があったので、街の外には出ていないのでは?と民衆は噂した
王子は一つの決断を下した
城下町の女達にクリスタルのヒールを履かせ、ピタリと履ける女性を我が妃とすることを宣言した
消えた美女に対する王子のこれ以上ない誠意のあるプロポーズの意思表示だった
王家の召し使い達はクリスタルのヒールを持って街じゅうを探した
女達は王子の妃になれることに色めき立ったが、誰もクリスタルのヒールを履こうとはしなかった。自分が謎の美女でないことを自分が一番知ってるから
そして…
わたしの家の近くの広場に王家の召し使い達と『クリスタルのヒール』が来た