あなたが綺麗な人だから(第11章)
青年はそのリンゴを拾いながら少し怒った顔でわたしに言った
「何があったか知らないけど、食べ物は大切にしなきゃ」
続けて言った
「このリンゴはね、人に食べられるまで大切に作られた大切なリンゴなんだよ」
更に青年はわたしに近づきこう言った
「大切なリンゴだから、綺麗なあなたにプレゼントしたんです」
青年はリンゴをわたしに手渡した
「そんなに顔を隠してちゃ、もったいないよ」
と優しい笑顔でわたしに言い、わたしが顔を隠していた髪を指で掻き分けて、「ほらね」と言った
わたしの頭をそっと優しく撫でてくれた
わたしは…
思わず涙が出た
ずっとこらえていた何かが吹き出した
ハッと我に返り涙を止めようとしたけど、涙が止まらない
止めようとすればするほど、涙が次々と溢れて来る
彼は突然のことに戸惑ってた
それを見た市場の仲間達が彼に
「おいジョセフ!女を泣かせたのか」
「こんなペッピンさんを泣かせる野郎は最低だぞ」
と次々に冷やかしてくる
彼は慌てて周りに説明にもならないような説明しながら、わたしに必死で謝ったり、なだめたり、なぐさめたりしてくれてる
わたしは彼のその姿が嬉しくて、もっと涙が止まらなくなった
可笑しくて、笑って、涙が止まらなくなった
嬉しくて、嬉しくて




