プロローグ(序章)
誰もが知る有名な童話の視点を変えて描いたラブストーリー。時は中世の欧州、ある一人の女性のお話です
…「わたし」はすごく臆病な人間だったと思う
わが家は父と母、姉とわたしの四人家族だった
わたしの母親は没落してたとはいえ貴族出身のせいか、どこか品があり綺麗だった
ただ、気位が高く、家の再興を願う気持ちも強いことは幼いわたしでも解ってた
姉はそんな母親の願いの元に大切に育てられ、母と同じような性格になった
母が姉を可愛がった。理由は性格が似てたからだけではない。なにより姉は美しかった。それが母の自慢だった
いずれは姉はその美貌を活かし、しかるべき貴族の御子息と結婚し、そして我が家を再興する。それが母の願いでもあり、姉の願いにもなってた
姉はどこか華やかな雰囲気があり、気難しい性格も逆に華やかさを際立たせてた
姉を見てると我が家の再興も夢ではないように思えた
わたしは自分がどういう存在であるかは、母のわたしに対する態度でわかった
姉は新しいものを与えられ、わたしは姉が飽きたものか、着れなくなったものを与えられた
わたしはわたしが地味で、人並の器量しかないことを誰よりも知ってた
わたしには家の再興を願う母の思いに応えられるものがなかった
わたしは姉の強い光の中に消えた
わたしができることは母と姉の邪魔をしないことしかなかった
わたしは母と姉の機嫌を取り褒められることが、わたしの唯一の存在意義になった
父親は優しい人だったが、どこか口下手なとこがあり、母や姉の行き過ぎる行為にも何も言わず我慢するような人だった
だが、ある日初めて口喧嘩をしたかと思うと、そのまま家を出ていった
出ていく父はわたしを見つめると、わたしの頭をそっと優しく撫でてくれた
それが父との最後の記憶になった