3/3
「カップ麺」「さいごの嫌がらせ」
「カップ麺」
叔父はカップ麺に湯を注ぐと、必ず縁側で煙草を吸った。「吸い終わるのが、大体3分なんだよ。」煙草で時間を計るのが、幼い俺には格好良く思えて真似するようになった。今では文字通り煙たがられ、肩身の狭い思いをしている。あの頃は、大人の男の象徴だったのにな。煙草を蒸しながら流れた時を思う。
「さいごの嫌がらせ」
叔母の遺言状には、「私の財産の内、カニ味噌缶の全てを、甥に譲り渡す。」と書かれていたらしい。お陰で部屋はカニ味噌の缶詰で溢れかえっている。最期まで嫌がらせが好きな人だ。僕が嫌いなものをよく知っている。けれど、これが哀しみに浸らせないための彼女の作戦だということもを僕も知っていた。