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狼狼狼狼狼狼狼狼狼娘  作者: 宵闇レイカ
五章 白き郷
56/61

駆けん月







 空間が、砕けた。


 漫画で見るような結界そのもの。本来の空間とは隔離して独自の空間を創り出すもの。

 それが、恐らく内側から砕けた。


 原因は一目瞭然だった。

 黄金色を見せる黒い髪の男。黄昏の輝きをした着物は九狼専用のもの。

 覗かせる狼の耳と尾。そして辺りに疎らに交わる疑似の空間由来の黄金は、それだけで情報として十分だった。


 輝白の、その黄金を纏った腕は、姿を消していたセンラの胴を貫いていた。


 手前には鉄臭い赤色を散らすメイナが伏していた。センラは彼女を庇わんとした、――か。



期沙(きすな)ちゃん‼逃げろッ‼‼》


 幽霊の雁啼(カリナ)が叫ぶ。意思を汲んで俺の代わりに。

 俺の口には、別の用があった。






輝白(かぐしろ)おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッ‼‼‼‼‼‼‼‼」






 吠える。

 

 駆ける。


 怒りは精神性の強化と成り、カリナは俺の肉体に被せてある。

 理由は、その方が精密性に優れるから。と、


 俺が、自分の手でぶん殴らなければならなかったから――


「が…ふ…ハッ。『霊』で『神』は倒せない…」

輝白は白髪(しろかみ)を赤く染めたセンラを横合いへ突き飛ばし、地から大量の黄金を生み出す。

 黄金は捻じれ合い、収束し、ただ貧弱な人間を叩きつぶさんと迫る。

「ッァア‼‼」

殴り抜き、打ち砕く。

 肘は乾いた嫌な音を立て、皮膚は弾けて赤く飛沫を散らす。

 だが、関係ない。


 そのまま黄金の拳を抜け、クソ野郎の懐まで迫る。

 赤く塗れた拳を振り抜き、輝白の顔を殴り抜く。


「…ッ‼」

「…‼」


 輝白は勢いに数メートル飛び、そのまま小さくバウンドしてようやく動きを止める。

 だが、


 黄金。

 蛇くらいの太さと動きの黄金が、地面の至る所から現れる。

 全方位から迫る黄金に、全開のカリナが対応する。

 カリナの、霧を凝縮したような黒い触腕が、黄金一本一本に対応する。輝白の言葉の意味は知ったことではないが、黄金のそれらとカリナの破壊力とでは、少しカリナのが上回っていた。

《やれ‼お前が‼》

倒れていようが関係ない。そのまま殴り抜いてやる…ッ‼


 しかし、輝白は――


「今の輝白(オレ)が…。もっとも『神』に近い…‼」

「――ッ⁉」

起き上がるという段階を飛ばして、輝白を包んだ黄金の波がそのまま迫る――‼

「センラッ‼」

同じ九狼に『武白(たけしろ)』の自動防護はあてにならない。飛び込み、センラを抱えて再びメイナの倒れている辺りまで飛び退く。

 カリナの力を借りて触腕のドームを形成し、波からひとまず逃れる。

《クソ…ッ‼》


「……生きてる。絶対に死んでない…‼」


カリナは幽霊だ。人の魂の在りようは判別つく筈だ。

 そのカリナの表情を、しかし俺は信じることはできなかった。

 そんな運命はありえない。あってはならない…‼


《月…》


「死んでない」


《違うんだ…。認めなくてはならない…》

はやドームの強度は限界だろう。本来は攻撃から身を護るためのものではない。カリナは独立しているのではなく、俺も繋がっているからわかる。

 輝白は俺達も殺さなければ気が済まないだろう。排除すべき因子に変わりはないのだ。

 そうなれば、センラとメイナの回復を―――


《月ッ‼‼》


「死んでない‼」


《聞け‼》


信じたくない。信じてはならない。あってはならない。

 だが、カリナは――

《…致命傷だ。だが、魂はまだ残っている》

「…ッ‼…?」

《さっきお前が触れた時に確認できた。……お前が最後の札だ》

既にドームは崩れ始めていた。限界まで市縮小して強度を維持しても、ここまでだ。

 完全に身を護る手段がなくなれば、三人とも今なお襲いくる黄金に貫かれる。そうなれば四人はそこまでだろう。

 だから、カリナは――







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